会長コラムCOLUMN
第10回 「吉川英治のつぶやき」 2008.11.28
「波にまかせて、泳ぎ上手に雑魚は歌い、雑魚は踊る。けれど、誰か知ろう。百尺下の水の心を、水の深さを」
これは、吉川英治作「宮本武蔵」の最後の部分です。
11月10日の日本経済新聞にこんな話が載っていました。
イトーヨーカ堂会長の伊藤雅俊氏は、食事をされていても、
「これは、おいしい。産地はどこでしょう。料理法はどういうものでしょう。」などと聞かれるそうです。
これを、聞いた方は「この人は、消費者の満足を追いもとめているんだ。」と思われたそうです。
そして、この「波に任せて・・・。」を引用されました。
雑魚は消費者のたとえ、また百尺下の水は伊藤氏ということなのでしょう。
言葉は、象徴であって、その事実のすべてを表現しきるというものではありません。
全ての人が、個々取り巻く環境に、精一杯対応すべく日々の暮らしを繰り返しています。
でも、百尺下の水の心とは、過去から現在未来を貫く「大いなるもの」。
我々が日々の暮らしのなかで、ふと感じる「人智を超えた力」。
それを吉川英治が武蔵をして言わしめた、そんな気がしてなりません。
坂部 達夫