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所得拡大促進税制(平成25年度税制改正/法人税・所得税)

なんとなく期待が膨らみ、うれしくなるようなタイトルです。
読んで字のごとく、我々の稼ぎを増やすことを促す税制が平成25年の税制改正に盛り込まれました。われわれ国民の多くは、会社から何らかの経済的利益を受けています。それは勤めていれば給与で、商売をしていれば売上になり、これが生活の基盤になるものです。

バブルの崩壊以来景気は右肩下がりを続けてきました。そして、その景気に連動するように、給料のベースアップはどこか遠い世界の話であり、家計は厳しく、消費は全く低迷して推移していました。昨年末に安倍政権が誕生し、いわゆるアベノミクスという経済政策が展開され市場は敏感に反応しています。株式市場も活気を取り戻し、為替は円安に振れ、高級マンションの販売に予約が入り始めています。

とにかく、景気が上向いて、消費が回復しなければ、日本の将来はない。そこで、さらに税制で後押ししようというのが表題の「所得拡大促進税制」となるわけです。ちょっと縄のれんでもくぐろうか。そんな気持ちにもなろうというものです。

制度の対象

政府税制改正大綱(以下「大綱」といいます。)では、あたかも「法人」のための制度のようにかかれていますが、説明文の最後に(所得税もおなじ。)とありますので、個人事業でも同じような取扱いがなされると思います。
そして、中小企業(資本金1億円以下)は、控除限度額が大法人の倍(10%→20%)に設定されています。大企業のみならず中小企業にも多くの人が勤めています。中小企業を支援することによって雇用を活性化させようという意向でしょう。

概要を確認しましょう

「会社が、2013年4月1日から2016年3月31日までの間に、国内雇用者(役員等を除く使用人のうち、国内に勤務する雇用者)に給与等を支給する場合において、その企業の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であるときは、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができることとする。ただし、控除額は、当期の法人税額の10%(中小企業者等は20%)を限度とする。」 以上が、「大綱」の表現をまとめたものです。
平たくいうと、前期の給与総額に比べて今年の支給額が5%以上増加していれば、その増加額の10%を法人税額から差し引いてあげましょう。ただし、引けるのは法人税額の10%が限度だよ(中小企業は20%)ということになっています。

以上、言葉の説明ではわかりにくいので簡単な例をあげましょう。
12月決算法人で実際に適用する事業年度は平成26年12月期(今期とします。)とします。平成25年12月期(前期とします。)の給与総額は1,400万円でした。この制度を適用しようとする今期は、給与総額が1,740万円だったとします。ちなみに当期の一人当たりの平均給与の額が290万円で前期が280万円でした。
「基準雇用者給与等支給額」は前期の給与総額の1,400万円をいいますので、「雇用者給与等支給増加額」は(1,740万円−1,400万円)340万円となります。この増加額が前期の支給総額の5%以上になれば要件を満たします。検証すると340万円÷1,740万円=19.5%≧5%で、この基準(増加基準といいます。)を満たします。

さらに、上記の増加基準の他に(1) 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと、(1,740万円≧1,400万円)(2)平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額と下回らないこと(290万円≧280万円)、の2つの基準を満たすことが必要となりますが、この2つの要件もクリアしています。
最終的には、340万円の10%、34万円を法人税額から控除できます。

本当につかえるの?

過去鳴り物入りでできた制度が、使われずに何となく無くなっていく例が見受けられます。昭和50年代にできた、給与所得控除の代わりに、実額控除を認める「特定支出控除」などが最たるもので、年間取扱い件数が10件位であったと聞いています。

この「所得拡大促進税制」はどうでしょう。まず、特徴は所得から控除するのではなく、法人税額から控除する税額控除制度であることです。まず、欠損金が生じた場合には、税額控除は全くの無効となります(場合によっては1年間繰越控除ができるようになるかも。)もし所得控除とされた場合はなく、増加給与の額が経費とされて、赤字になったら9年間繰り越せるはずだったのですが・・・。

あとは対象者です。大綱では役員・役員の特殊関係者を除くとあります。特殊関係者とは通常親族をいいます。この特殊関係者の定義もまだ不明ですが、いわゆる奥さんやお子さんです。これを除外するのは、我が国の中小企業の実態を反映していないと思っています。また、明らかになっていませんが、給与に社会保険料の会社負担も含めてもらいたいですね。


(文責  坂部 達夫)

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