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信頼について考える
1.はじめに
信頼とはいったい何でしょうか?信頼を得るためにはどうしたら良いでしょうか?私は信頼の重要性を認識しつつも、とりたてて深く考えることもなく日々過ごしてきました。
ある書籍を手に取ったことをきっかけに、信頼の重要性について改めて考える機会がありましたので、企業の信頼と個人間の信頼の両面から信頼について考えてみたいと思います。
2.企業の信頼
企業にとって信頼がなくなることは致命的です。経営者の皆様ならよくご存知のことと思います。
例えば、賞味期限切れの材料を使い続けていた飲食店や、違法な日雇い派遣を続けていた企業の問題が表面化したことがありました。いずれも社会問題に発展し、売上の減少によって倒産に追い込まれたり、信用を回復するまで膨大な時間が必要だったり、一時の気の緩み(?)が大きな代償となったものでした。企業の動機はともかく、大きな裏切り行為を行ったと社会からみなされてしまえば、信頼の低下には歯止めがかからないということが浮き彫りになりました。
このように、企業にとって信頼はなくてはならないもの。信頼は社会に対する責任と同義です。信頼がなくなれば企業の経営基盤は揺るぎ、市場からの退場を余儀なくされます。
多数の企業が社会から信頼されることの重要性を理解し、信頼される企業になるために多くの労力や時間、費用をかけているのです。
3.個人間の信頼
一方で個人間ではどうでしょうか?私たちは日々、いろいろな人たちと関わり合いながら生活しています。忙しい日々の中でお互いの信頼を高めるために何か積極的に取り組んでいることがあるでしょうか。
例えば、家族・友人・職場の同僚に恋人。仲が良いんだから、ちょっとくらい待ち合わせに遅れてもいいや。仕事が忙しいからちょっとくらい八つ当たりしたって構わない。などなど。
積極的な取り組みどころか、大事な人からの信頼をなくしてからようやく失ったものに気づくということが実情なのではないでしょうか。
4.信頼口座
「7つの習慣」の著者であるスティーブン・R・コビー氏は、著書の中で「信頼口座」という考え方を示しています。この考え方は、私にとって新鮮でしたので以下に引用します。気になる方がいらっしゃいましたら、7つの習慣を是非読んでみて下さい(大ベストセラーですので大抵の本屋に置いてあります)。
銀行の預金口座がどのようなものかは、誰でも知っている。お金を入れれば残高が増え、必要な時にお金を引き出せる。それと同じように、人と人との関係で生まれる信頼を貯えておくことを銀行の口座にたとえて、信頼口座と呼ぶようにしよう。それは、人間関係における安心感でもある。
信頼口座がからっぽの状態は、まるで地雷原を歩くようなものだ。言葉一つに気を遣い、相手の顔色をうかがいながら言葉を選ばなければならない。緊張の連続だ。」
スティーブン・R・コビー 「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」(キングベアー出版2013)
お互いを尊重し合い、信頼という名の資金が口座貯まっている状況では、多少の行き違いがあっても良好な関係を続けることができますが、逆に不用意な発言や不誠実な言動で信頼口座からの引出しが続き、残高がからっぽになってしまえば、一事が万事、すぐにいがみあいが始まってしまうことでしょう。
私はこの考え方にとても共感し、日頃の自分の行いを振り返りいかに自分勝手にふるまっていたかを考えさせられました。信頼口座の残高を増やすにも引き出さないようにするにも、相手の立場に立って思いやりを持つことが大切だと思います。思いやりがある人間は信頼され、思いやりのない人間は誰からも信頼されないという少し怖いことが言えるのではないでしょうか。
5.おわりに
企業にとっても個人にとっても信頼はなくてはならないものです。企業は利害が絡む以上信頼には特に敏感で、自らの襟を積極的に正そうと常に努力しているように感じます。
一方で個人間では、自分の立場を一方的に主張するのみだったり、意見を言わなかったりしてお互いに疲れ果ててしまい、「なんで理解してもらえないんだ」と途方に暮れ、挙句の果てには「あいつはだから信頼できない」などという考えに陥ってしまいます。
信頼は、何気なく作られるものではなく、お互いに尊重し合いながら、信頼口座の例のように、積極的に意識し思いやりを持ち合わなければ作ることができません。そのためには、相手の立場にたったうえでの思いやりが重要なことを深く考えさせられました。これは、仕事関係、友人関係もちろん家族における関係でも言えることだと思います。
(坂部 啓太)