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適正申告と書面添付制度の活用で税務調査を省略

1.書面添付制度とは

 税理士等が、税理士法33条の2に規定された添付書面(税理士等が申告書を作成したときに、その申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を記載した書面)を申告書に添付した場合には、税務当局が税務調査の通知を行う前の段階で、添付書面に関する意見陳述の機会が税理士等に与えられます。この仕組みを書面添付制度といいます。


2.書面添付を行うメリット

 前述の通り、書面添付を行った場合には、税務調査に先立って税理士等が税務当局に対して意見陳述を行いますので、この意見陳述の結果によっては実地調査に移行しない(調査が省略される)ことがあります。これにより納税者としては、実地調査が行われることによる時間的負担及び精神的負担が軽減されることになります。


3.書面添付は税務当局も積極的に取り組んでいます

 税務当局としても税務調査に割ける人員には限りがあるため、適正な申告を行っていると認められる納税者に対しての税務調査はできる限り省略し、悪質な脱税行為を行っている可能性のある納税者に対する調査を重点的に行いたいという意向があります。また、この制度を通じて、税理士等に対してもより適正な申告書の作成・提出を促したいという意向もあります。そのようなことから国税庁としても書面添付制度の普及・定着のため積極的に取り組んでいます。


4.書面添付の実施状況

(1)法人税(東京国税局管内)

  平成22年度  平成23年度 平成24年度
@税理士関与申告件数  732,219件 730,746件 735,509件
A書面添付件数 34,317件  37,340件  39,922件
B書面添付割合 4.7% 5.1% 5.4%
C意見聴取件数※ 1,346件 1,620件 1,293件
DCの内調査省略件数 849件 1,031件 874件

(2)相続税(東京国税局)
  平成22年度  平成23年度 平成24年度 
@税理士関与申告件数 19,397件 20,518件 20,326件
A書面添付件数 910件 1,163件 1,485件
B書面添付割合 4.7% 5.7% 7.3%
C意見聴取件数※ 104件 141件 154件
DCの内調査省略件数 25件 14件 29件

※「意見聴取件数」は、書面添付が実施された申告に対して、税務調査に先立ち税理士等による意見陳述が行われた件数です。

(3)実施状況の傾向
 特に相続税の書面添付割合の増加が顕著ではありますが、法人税についても書面添付割合は増加しています。また、上の表は東京国税局管内の実施状況ですが、法人税の書面添付割合の全国平均は7.3%〜7.4%となっていますので、全国的にはさらに普及が進んでいるといえるでしょう。

 意見聴取件数が減少しているのは、調査が困難なケースが増加していることから、実地調査も含めて、調査全体に以前より日数がかかるようになった事、税務調査に関する法令等の改正があった事が影響しているようです。

 そして意見聴取の結果調査省略となったケースは、法人税申告では平成24年度で約68%となっており、書面添付制度が納税者にかかる負担の軽減及び税務行政の効率化に貢献しているといえます。一方相続税申告では、調査省略の割合は約19%と法人税よりも大幅に低くなっています。これは相続税申告が法人税と異なり会計帳簿が存在しない事、個人の生涯の活動結果に基づく申告で一度きりの申告である事から、書面添付だけでは税務当局の疑問が解消しきれない事が多く、結果として調査省略とはならないケースが多くなってしまうようです。とはいえ相続税については、平成27年以降において税制改正による申告件数の増加が見込まれている状況ですので、税務当局においても税理士等に対して書面添付制度を積極的に活用するよう求めています。


5.当事務所の方針                             

 当事務所においても法人税の申告ではほぼ半数について書面添付を実施しており、年間にして4〜5件の意見陳述を行っています。そしてその意見陳述の結果として調査省略となるケースが年間2〜3件という状況です。また、平成27年以降の相続税申告件数が増加する事もあり、既に相続税申告についても積極的に書面添付を実施しております。
 
 書面添付については虚偽記載に対する税理士等への罰則もあるため、その実施にあたっては慎重な判断を要しますが、納税者の負担軽減と税務行政の効率化のため、今後も適正な申告書を作成し、書面添付制度の積極的な活用に努めてまいります。


(遠藤 剛彦)

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