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平成27年度税制改正−法人税関係
1.法人税率の引下げ(法法66、措法42の3の2)
−中小法人(資本金1億円以下の法人)対象
中小法人に対する法人税率は、年800万円超の所得金額については25.5%、年800万円以下の所得金額については21.9%とされており、さらに租税特別措置法42条の3の2により15%に軽減されています。
この15%の軽減税率は、平成28年度まで2年間延長することとされ、公益法人の年800万円以下の部分に対する15%の軽減税率、協同組合等の年所得800万円以下の部分に対する税率15%についても同様に2年間延長されることとされています。
なお上記の、年800万円超の所得に対する現行の25.5%の税率は、平成27年4月1日以後開始する事業年度からは23.9%に引き下げられることになり、大法人の現行税率25.5%も23.9%に引き下げられることになっています。
2.青色欠損金の繰越控除制度の見直し(法法57)
ー大法人向け
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度について、資本金1億円超の大法人は、平成23年度の税制改正において、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除限度額が繰越控除前の所得金額の80%に制限されました。今回の税制改正では、この控除限度額について、平成27年度に65%、平成29年度に50%と段階的に引き下げられることとされています。参考までに中小法人については、現行と変わらず所得金額の100%について控除が認められ(法法57J)、公益法人、協同組合も同様です。
なお繰越控除の対象となる欠損金額は、各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額で前事業年度までにこの規定により損金に算入された金額及び欠損金の繰戻し還付(法法80)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となった金額を除いた金額となります。
3.受取配当等の益金不算入制度の見直し(法法23、法令22)
現行税制では、法人が内国法人から配当等を受けた場合には、その受取配当等の額の全部又は一部は、課税所得の計算上益金に算入しないこととされています。これは配当支払法人における配当の支払原資に対する法人課税と、受取法人における受取配当等に対する法人課税という二重課税を排除するという趣旨に基づくものです。そこで、配当の対象となった株式の持ち株割合に応じて益金不算入割合が定められています。
今回の改正では持株割合が発行済株式等の総数または総額の5%以下の保有割合のものは、非支配目的株式等として一般株式等と分離され、従来の益金不算入割合50%から20%に縮減され、併せて「負債利子控除」の見直しも行われることになっています。
(現行)
区分 | 持株割合 | 不算入割合 | 負債利子控除 |
完全子法人株式等 | 100% | 100% | 無 |
関係法人株式等 | 25%以上 | 100% | 有り |
上記以外の株式等 | 25%未満 | 50% | 有り |
(27年度税制改正)
区分 | 持株割合 | 不算入割合 | 負債利子控除 |
完全子法人株式等 | 100% | 100% | 無 |
関連法人株式等 | 3分の1超〜100%未満 | 100% | 有り |
その他の株式等 | 5%超〜3分の1以下 | 50% | 無 |
非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% | 無 |
負債利子控除額の計算における簡便法の基準年度
関連法人株式等に係る負債利子控除額の計算における簡便法の基準年度を「27年4月1日から29年3月31日までの間に開始する事業年度」とする。
(参考)負債利子控除額の計算方法
@ 総資産按分法:当期に支払う利子の総額に、総資産に占める株式等の割合を乗じて計算する方法。
〔控除する負債利子額〕
当期の支払利子額×株式等の帳簿価額※/総資産の帳簿価額※
※ 前期末及び当期末における帳簿価額の合計額
A 簡便法:当期に支払う利子の総額に基準年度における実績割合(負債利子控除割合)を乗じて計算する方法
〔控除する負債利子額〕
当期の支払利子額×基準年度の実績割合(負債利子控除割合)※
※ 基準年度の実績割合(負債利子控除割合)
=@の総資産按分法で計算した基準年度の負債利子控除額の合計額/基準年度の支払利子額の合計額
負債利子控除関係
受取配当等の益金不算入額を計算する場合、当期において支払う負債の利子があるときは、現行の取扱では完全子法人株式等に係る配当等を除き受取配当等の額から負債の利子の額のうち、配当等の元本たる株式等に係る部分の金額を控除することになっています。つまり、配当等の額から負債利子の額を控除した残額が益金不算入の対象とされることになるわけです。
この場合の負債の利子は通常の負債の利子のほか、手形の割引料・社債その他の金銭債務の償還差損その他経済的な性質が利子に準ずるものも含まれるとされ、毎事業年度ごとに支払利子の総額を期末の総資産価額の割合によって計算する方法のほか、簡便法として負債利子の額を基準年度として定めた事業年度の総資産の帳簿価額の総額に対する株式等の帳簿価額の割合によることも認められますが、この簡便法による基準年度を「平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度」に改正される予定です。
なお、この負債利子控除の対象となる配当等から完全子法人等に係る配当の他、一般株式等の配当、非支配目的株式等に係る配当も除外されることになります。
4.外形標準課税の拡充(法人事業税)
法人事業税については、平成15年度の税制改正において、資本金1億円超の大法人を対象とする「資本割」と「付加価値割」の二つが導入され、所得課税のほか、報酬給与額・支払利子・支払賃借料等を課税対象とするいわゆる「外形標準課税制度」が平成16年4月1日以後開始する事業年度から適用されて現在に至っています。これにより、赤字法人でも納税が発生することとなったわけです。今般の改正により、「資本割」と「付加価値割」の税率を平成27年度と28年度にかけて2倍にする一方、所得割の税率を3分の2程度に引き下げることとされています。
(税理士 菊池 常雄)