耳寄り情報BITS OF KNOWLEDGE
平成27年度税制改正−個人所得税関係
1.NISA(非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税措置)の拡充等
(1) 投資上限額の引き上げ
現行の年間100万円から28年分以降は、120万円に拡大
(2) ジュニアNISA制度の創設
年間投資上限額を80万円と制限されますが、20歳未満の者も口座開設が可能となりました。投資可能期間は平成28年4月から平成35年12月末まで(この終了時期は現行のNISAと同じ)非課税期間は投資した年から最長5年間とされ、最大で80万円×5=400万円となります。
運用管理は、未成年のため原則として、親権者等が代理して運用を行うことになり、原則として18歳までは払出しが制限されます。
NISA制度とは
平成26年1月からスタートし、最大500万円までの投資総額(1年間の上限は100万円)が5年間非課税となる制度で証券会社にその専用口座を開設して取引すれば、上記投資限度額の範囲内で取得した株式や株式投資信託などの配当金や売却益に対しては非課税となるというもので、一人一口座のみ満20歳以上の居住者のみが開設できるものとされていたものが、上記のとおり、平成28年4月から20歳未満の者も開設できることとなったわけで、また、投資上限額も120万円×5=600万円に拡大されるわけです。
2.住宅ローン控除の適用期限の延長
居住者が住宅ローンにより平成29年12月31日までの間に居住用家屋新築し若しくは取得し、自己の居住の用に供した場合には、住宅ローンの残高に対して一定額の税額控除が認められますが、その取得し居住の用に供する期限を、平成31年6月30日まで延長されることになりました。
3.国外転出する場合の譲渡所得等の課税制度の創設
国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなること)をした一定の対象者が保有していた株式等について、出国時に決済(譲渡等)したとみなし、未実現のキャピタルゲインについて課税することとなったわけです。対象者のうち、国外転出の日から5年以内に帰国し、引き続き株式等を有していた場合には、更正の請求により課税を取り消すことができるとされています。
<対象者> 下記のすべてに該当する者
・国外転出時に保有していた有価証券の価額が1億円以上の者
・国外転出の日前10年以内に5年超国内に居住していた者
・平成27年7月1日以後国外転出する居住者
(注) 外国人が日本で働く際に取得する就業ビザによる滞在期間は、国内居住期間から除かれる。
<納税猶予>
本特例は、要件を満たせば原則として国外転出の日から5年(申請で最長10年)間の納税猶予が認められ、納税猶予を受けている場合は、その期間中、税務署長に対し、12月31日における有価証券等の保有状況に関する届出書を、翌年3月15日までに、毎年提出しなければならないことになっている。
※この制度のポイント
株式等のキャピタルゲインについては売却した者の居住地国に課税権があるとされている。そのため国内で保有していた株式等を出国先のキャピタルゲイン非課税国で売却することで、課税逃れができてしまうので、それを防止するため国外に出国する際に譲渡益課税を行うこととしたもので、平成27年7月1日以後に国外転出する場合に適用される。
また、国外に転出をしていなくとも、相続・贈与等で非居住者に株式等が移転した場合は、その時の価額において決済したものとして、本特例の対象として課税されることとなる。そして、非居住者に移転した有価証券等の額が1億円未満でも1億円以上保有している場合は課税対象となる。なお、相続人や受贈者について相続税・贈与税が課税される場合であっても贈与者や被相続人については、本特例により所得税が課税されることになる。
(税理士 菊池 常雄)