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ゲーム理論 〜囚人のジレンマ〜

 皆様はゲーム理論という言葉をご存知でしょうか?

 私ははじめてゲーム理論という言葉を聞いた時、てっきりテレビゲームに関する考察か何かかと思いました。ゲーム理論とは、れっきとした学問で、戦略的な意思決定に関する最適解を突き詰めて考えるという数学理論です。

 ゲーム理論のはじまりはチェスの分析によるものでした。この局面だったらどの一手をうつことが最善なのか?計算に計算を重ねてその局面ごとの最適解を論理的、数学的に求めるというものです。

 ゲーム理論のキモは、与えられたルールのもとで各プレーヤーがとると考えられる最適な行動の組合せの解を求めることにあります。一定の制約条件のもとで最適解を求める学問といったところでしょうか。
 今では数学の分野のみならず、経済学、経営学、心理学、はては政治の世界にまで応用されている結構守備範囲の広い学問なんですよ。どうです?少しは興味をもって頂けたでしょうか?

 今日は、ゲーム理論の代表格である囚人のジレンマをご紹介します。


1.囚人のジレンマ

(1)ゲームのルール
 
 重大な犯罪に関与したとされる容疑者が二人、別々の牢屋に入れられました。二人は共同で犯行に及んだと考えられますがなかなか口を割りません。そこで警官は二人に司法取引を持ちかけます。それは、別々の牢屋にいる容疑者に対して次の条件を提示するというものです。

・二人ともこのまま黙秘し続けるなら二人とも懲役5年とする。
・一人が黙秘し、もう一人が自白したなら、黙秘し続ける人間は懲役20年だが、自白者は懲役1年に減刑する。
・ただし、二人とも自白してしまったら、二人とも懲役10年とする。

 この時、2人の容疑者は別室にいる一方とはコンタクトを取れません。お互いを信じながら強調して黙秘するか、それとも一方を裏切って自白するべきか。刑期を一番短くするためには、どのように行動したら良いのかというのが問題です。

(2)どの条件を選ぶべきか?

 一方の容疑者をX、もう一方の容疑者をYとします。それぞれの立場に立ってどういった行動をとるか考えてみましょう。あなたが容疑者Xだとします。

@ 容疑者Yが裏切って自白を選ぶと予想する
 相手が自白を選ぶとするなら、黙秘している訳にはいきませんよね。だって懲役20年になってしまうのですから。この場合は、懲役20年よりはましな「自白する」を選ぶことになります。

A 容疑者Yが自分を信頼してくれ、黙秘を選ぶと予想する
 相手が黙秘してくれるとすれば、あなたも黙秘し懲役5年となりますか?あなたが自白すれば懲役1年で済みますよ。刑期が短くなるのは自白です。よってより刑期の短い「自白する」を選ぶことになります。
 
 以上のことから、容疑者Yが自白しようが黙秘しようが、あなたは「自白する」を選ぶことが最適となりそうです。
 では、容疑者Yの立場になって考えてみましょう。あたりまえですが、容疑者Yの立場であっても、同様に「自白する」が自分にとっての最適解となるでしょう。

(3)お互いにとって本当に最適な結果だったのか?

 自分にとってみれば最適解だったはずの「自白する」ですが、お互いが「自白する」を選んだ結果、懲役はお互い黙秘するの「5年」より重い「10年」になってしまいました。
 こうして、自分1人にとっての最適解のみを追求した結果、互いに裏切り合い(自白)、共倒れ(懲役5年ではなく10年)になってしまうという現象がおきます。

 この場合は、自分の利益だけを追求することはせずに、お互いに黙秘し、協調戦略をとるということがお互いにとっての最適解になります。ただし、いざ協調戦略を取ろうとしても、相手が裏切って自白するかもしれないという疑心暗鬼にかられ、結局はお互い自白するという結果になってしまうそうです。
 ゆえに囚人のジレンマといわれています。


2.一般のビジネスに応用すると・・・

 囚人のジレンマが示唆してくれる貴重な発見のひとつに、自分以外のプレーヤーが存在する場合、彼らも自身にとっての最善策をうってくるということがあります。
 他の競争相手も手を打ってくるなんてことは露ほども疑わず、自分だけ最善の利益を求めようとし、失敗してしまう。ビジネスでも良く見られるのではないでしょうか。

 例えば、あなたはスーパーを経営しているとします。最近、向いに競合店が出店され、お客の入りが以前より少なくなりました。当然、おもしろくありませんよね。お客を取り戻したいあなたはどうしますか? 
 ぱっと思いつくのが価格をさげることなのではないでしょうか?
 価格を下げる。そうすれば、きっとお客さんは自分の店に戻ってきてくれる。我ながら良い案だ。といったところでしょうか。

 しばらくはそうかもしれません。でも、もちろん他のプレーヤー(競合店)も黙っていませんね。より安い価格を提示してくるはずです。そうしたらまた価格を下げますか?いたちごっこになって最後には共倒れになるだけです。囚人のジレンマ的に言えば、お互いに相手を出し抜く(価格破壊)よりも、協調(申し合わせで価格維持)する方が最善策になるはずです。

 ただし、囚人のジレンマと同様に相手が裏切る(価格破壊に走る)かもしれないという不安から、せっかくの協調を維持することができず、共倒れの状況に陥るということは起きやすいそうです(ちなみにこの場合は、裏切り(契約違反)には相当のペナルティをかけることで防ぐことができそうです)。

 このように実生活でもなんとなく、実感・応用できるのがゲーム理論の醍醐味です。

 まだまだ面白い考え方がたくさんありますので、ご興味を持たれた方はゲーム理論に触れてみてはいかがでしょうか。

(坂部 啓太)

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