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(発行日 2012年12月7日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

代表取締役・税理士  坂部 達夫

「香木」。香りの元となる原木のことです。日本では、京都などを中心に、香木を扱う店が点在します。
有名なものは白檀・沈香・伽羅などで、ほとんどがベトナムやインドネシアからの輸入に頼っています。
日本には、推古天皇が淡路島に流れ着いた香木を沈香と認定した(595年)という日本書紀の記述があります。

世界の金融都市「香港」。香の名は、一説には香木の主要供給地だったからという由来があるそうです。
その香木が、不法な伐採と取引によって希少なものとなり、価格が跳ね上がっているというニュースがCNNで紹介されました。


お葬式やお墓参りの時以外にはあまり縁のないお香ですが、私たちはこの香りの中で、
手を合わせて心に落ち着きを取り戻すという古くからの習慣があります。
それを逆手にとって不当な利益を追及しようとする動きが出ているのは残念です。

今月のトピックス

iPS細胞と再生医療の将来

明治大学バイオリソース研究国際インスティテュート
所長 長嶋 比呂志

山中伸也京都大学教授のノーベル賞受賞に日本中が沸き立ち、
iPS細胞に改めて国民の注目と期待が向けられています。iPS細胞の利用によって、次世代の医療に
画期的な変革がもたらされると期待されていることは、多くのメディアが伝えているところです。
iPS細胞の利用は、大きく3つに分けられます。
まず、難治性疾患の患者さんの細胞から樹立したiPS細胞を利用して、その疾患の発症機構の解明や治療薬の
開発を行うことが挙げられます。これには新薬開発という産業的意味もあり、大きな期待が寄せられています。


次にiPS細胞を用いた細胞療法という新しい治療法のアイデアがあります。
病気の中には、例えば心筋梗塞や脊髄損傷のように、体の中の臓器や組織が、
投薬では回復しないようなダメージを受けるものがあります。
そのような病巣や損傷部位にiPS細胞を注入することによって、失われた機能が回復することが期待されます。


このようなことが可能となるのは、iPS細胞が多能性という特殊な能力を持つからです。
動物やヒトの体は、もとをたどれば1個の受精卵から発生しています。このことはすなわち、受精卵の細胞は
体中のあらゆる臓器や組織を作ることが出来ることを意味しており、そのような能力を多能性と呼びます。
ヒトのiPS細胞が受精卵と同じような多能性を持つとすると、夢はさらに膨らみます。
つまり、受精卵と同じ多能性を持ったiPS細胞からも、
色々な臓器や組織を作ることが出来るのではないかと期待されます。
これがiPS細胞に期待される第3の医療革命です。ヒトの臓器を人工的に作り出すことが出来るようになれば、
臓器移植医療は飛躍的に進歩し、多くの患者さんが救われることになるでしょう。


このように夢のような力を持ったiPS細胞ですが、その臨床応用に向けて、まだまだ課題も残っています。
例えば、細胞療法のために患者さんに投与したiPS細胞が癌化するようなことはないのか?
一度投与したiPS細胞は一生働き続けてくれるのか? そのような疑問に確実に答えるために
動物実験が不可欠であり、ヒト以外の動物でのiPS細胞の開発も精力的に進められています。

 
また、iPS細胞から臓器を作る夢についても、動物実験が大きな役割を担っています。
とても複雑な構造を持ったヒトの臓器を、人工的な培養技術だけでiPS細胞から作り出すことは
ほぼ不可能だと考えられています。そこで、動物の助けを借りるという発想が出て来ます。
動物の胎仔の発生過程には、ヒトの胎児と同様に全ての臓器を作り出す環境や機構が備わっていますから、
それをiPS細胞からの臓器作りに利用しようという発想です。
具体的には、動物の胎仔の中に、様々な方法でヒトのiPS細胞を組み込み、
ヒトの臓器を持った動物を作り出そうという研究が進められています。
我々もその一翼を担っており、そのためのクローンブタや遺伝子組換えブタの開発に取り組んでいるところです。


動物の体内を利用してヒトの臓器を作ろうとすると動物の脳にも
ヒトの細胞が入り込んでヒトの人格が生じる可能性があり、
このような研究は倫理的に許されないのではないかという議論があります。
一方で、臓器再生という先端医療に救済を求める、難病患者さん達の切実な声があります。


先端的な医学・生命科学研究の推進には、当然のことながら倫理的課題の議論が不可欠ですが、
残念ながら日本では肝心な議論が一向に進んでいません。
日本の生命科学や生命産業が著しい進歩を遂げても、その果実を社会に還元するための法整備や
社会的コンセンサスの形成が進まないことは、国家や国民にとっての大きな損失ではないでしょうか。
一方で、再生医療には生命に対する無限の欲望をかき立てる一面もあります。
我々人類が、どこまで高度な医療を追求するのか、あるいは追求して良いのか、
このような議論を「棚上げ」にしたままで良いとは到底思えません。

 
執筆者紹介
長嶋 比呂志 (ながしま ひろし)

明治大学農学部教授。
明治大学バイオリソース研究国際インスティテュート代表 
有限会社ミューペル 代表取締役
有限会社ミューペルは大学発ベンチャーとして、起業から当事務所が支援しています。
私の部屋    「宮本武蔵の『五輪書』について」

私は小学生の頃、宮本武蔵の映画を見るのを唯一の楽しみとしていました。
なかでも巌流島での佐々木小次郎との決闘場面です。「剣豪武蔵」の強さに、
あこがれと魅力を感じていたからでしょう。
成人してから、宮本武蔵が書いたという「五輪書」を読み感じたことは、
その強さには天才的才能があったことは事実でしょうが、精神面を含め「勝つためにはどうすればよいか」
ということを生涯の課題として日々鍛錬を重ねてきた結果であることを知りました。


しかし、私はこの「五輪書」を単なる武芸書として認識していたのですが、
世の識者は武芸という技術の裏側にある心構えこそが、「勝機をつかむための実践哲学」であり、
現代の仕事や人生に応用することができるとして、ビジネス書として利用されていること、
また、アメリカでも多くのビジネスマンにも愛読されていることを知り、また読み返してみることにしました。

あとがき
2012年も残すことあと1ヶ月となりました。今年の初めに決めた抱負を思い返してみると・・・。
「今年の抱負はなんだっけかな?」という始末。これでは、いけませんね。
来年の今頃は、きちんと思い返せるくらいにはしたいと思います。(小高) 

(編集者:小高・高田・坂本・佐藤・坂部啓)

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