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(発行日 2013年12月6日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター
はじめに
代表取締役・税理士 坂部 達夫
今年最大のイベントは何であったか。
人によって答えは様々でしょうが、私は躊躇なく「お伊勢様の式年遷宮」を挙げます。伊勢神宮は、全国に約85,000ある神社の元締めで、日本の祖神である「天照大御神」を祀っているのはご存知のことと思います。この神社は20年おきに引越しをします。20年に一度、それこそ隣の敷地に、全く同じ社(群)を立て直すのです。これを「式年遷宮」というのですが、今年がそのあたり年で10月2日に内宮で、5日には外宮で「遷御の儀」が行われました。今回は62回目で、第一回は持統天皇の御世の西暦690年です。それから1,300年、20年に一度同じことが営々と繰り返されているのです。総工費は550億、これがすべて勧進(寄付)で賄われています。
神社に祀っているご神体を、是非お知り合いの宮司さんに聞いてみてください。そこにヒントがあります。神社は、人間に生まれてきた幸せを自覚させることに意味があると言われています。日本の祖神が祀られているお伊勢様。是非、その深い森の空気を感じていただければと思います。また、関心がある方は、少しお教えできると思いますので遠慮なく事務所に遊びに来て下さい。
今月のトピックス
60歳以降の継続雇用者に対する賃金制度の提案 |
廣野社会保険労務士事務所
所長・特定社会保険労務士 廣野 正通
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1.はじめに
平成25年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法により、継続雇用の対象者を限定する(人事評価や勤怠状況によって再雇用の可否を会社が判断できる)仕組みが原則として廃止され、希望者全員を65歳まで雇用することが義務づけられました。その影響を受け、60歳定年の会社では、高齢者に65歳までの5年間どのように働いてもらえば良いかを真剣に検討しなければならない状況となっています。
そこで今回提案したいのは、60歳に到達した従業員に対する賃金制度の設計です。
2.賃金水準の検討
まずは、定年(60歳)を迎える方の再雇用時の賃金水準を検討します。
厚生労働省が所管する独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、60代前半のフルタイム継続雇用者の賃金水準について、60歳直前より3〜4割引き下げる会社が最も多く、反対に賃金水準を下げないと回答したのは約10%です(平成22年3月の報告書による)。よって、再雇用時は賃金を従前の6〜7割の水準に見直すのが一般的と考えて良さそうです。
3.雇用保険の給付金(高年齢雇用継続給付)の活用
60歳到達時より賃金を75%未満に低下させた場合、雇用保険に5年以上加入している人は65歳に達するまで高年齢雇用継続給付を受給できるようになります。60歳時点の賃金から61%以下に低下すると、支給率が最大(低下した賃金の15%)となります。この給付金は雇用保険料を財源にしており、ハローワークを窓口として手続きします。
4.賃金低下における注意点
世間水準と給付金活用の2点から考えて、60歳以降の賃金はそれまでの6割程度に設計することを提案します。
ただし、定年退職者を嘱託社員として再雇用するという、雇用形態の変更のみを理由に、賃金を40%削減して問題はないでしょうか。結論を先に言えば、それまでと同じ内容の仕事を同じ時間担当してもらうとすれば、公序良俗違反による違法状態と判断され、賃金制度自体の説得力が失われてしまいかねません。
裁判例(「丸子警報器事件」長野地上田支判 平8・3・15)によると、業務内容、勤務時間および日数等が正社員と同様と認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社員の8割以下であるときは、使用者に許された裁量を逸脱したものとして、会社に8割を下回る差額の支払を命じました。この裁判例から推察して、雇用形態の変更(正社員→嘱託社員)という理由で減額できるのは2割までで、総額4割を減額するには別の根拠によって残り2割の減額に正当性を与えなければなりません。
その根拠とは、再雇用の前提として仕事の質と量を見直すことでしょう。例えば、それまで管理職だった方の役職をはずして一般職扱いとすることや、週5日勤務していた方を週4日勤務に時間短縮すること等が考えられます。
5.賃金制度の設計
これまで考察してきた内容から、60歳以降の継続雇用に関する賃金制度設計のポイントを挙げておきます。
@ 新賃金(月額)を60歳到達時の60%程度に設計する。
A 高年齢雇用継続給付を活用し、新賃金の15%を対象者が受給できるようにする。
B 定年前と比べて、仕事の質と量を軽減する。
<具体的にシミュレーションしてみましょう>
定年時に月額40万円の支給を受けている方の社会保険料や源泉所得税等を控除した差引支給額(手取額)を計算すると330,918円となりました(協会けんぽ(東京)加入・扶養家族1名、平成25年12月1日現在)。
この方が従前の60%(月額24万円)で再雇用されると、給付金を加えた差引支給額(手取額)は237,193円となります。支給額ベースで40%減額しますが、手取額ベースでは約28%の減額に留まり、減額幅が1割以上緩和されます。
なお、このケース(40万円→24万円)では、在職老齢年金を受給できる可能性がありますが、年金は個人の権利であり、会社の賃金制度上、期待するべきではないと考え、今回は検討していません。
6.まとめ
65歳までの雇用義務化を背景に、60歳以降の継続雇用者に対する賃金制度を検討してきました。会社がこのような賃金制度を作っておけば、会社と再雇用者の双方にとって継続雇用のイメージが共有できるようになり、会社の安定感が増していくと考えます。
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あとがき
年の瀬は何かと忙しい。大掃除、年賀状、お正月の準備等のスケジュールを作っていると、私の遊ぶ時間が無いことに気付く。リフレッシュはどうしても必要なので、スケジュール調整をしてみると、大掃除をする時間を削ることになってしまう。そこで「多少のホコリで病気などならない」と自分に言い聞かせるのです。(高田)
(編集者:小高・高田・坂本・佐藤・坂部啓)