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(発行日 2014年7月7日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

代表取締役・税理士  坂部 達夫

 卵を10個ずつプラスチックパックに詰める機械を紹介するテレビ番組をみました。殻にひびが入っていたり、中に不純物が混じっているのを透かし見たり、その選別の精度の高さには驚かされます。ところが、この機械を韓国に売ろうとしても全く売れないそうです。なぜかと言うと、韓国ではその精度が求められていないのです。精度を落として単価を下げたら売れ始めたそうです。

 わが国の中でも同じことがおこります。つい、われわれ日本人は、良いものは売れる、一生懸命やれば認めてもらえると考える傾向があります。でも、意外とそうでもないことが多い。それは、市場が求めていないもの、まだ新規性が強くて市場が理解できないものを手掛けるなどの問題もありますが、要は、品質にこだわりすぎるというより、相手の立場にたてず独りよがりになる傾向があるということかもしれません。これを押さえることが経営の要諦のひとつだと考えています。

 

 

今月のトピックス

法人税率等引下げ議論と地方税のあり方

税理士  坂部 達夫

 わが国の現状の法人税実効税率は34.64%(全国平均)です。これでは、海外の投資を呼び込めないし、有力な日本企業が海外に移転してしまう。少なくともOECD(経済協力開発機構)加盟国平均の24.11%を目指して国際競争力を高めるべきという意見が大勢です。 
ところが引き下げに見合う財源確保が問題となります。1%の引下げにつき5千億円の税収減になりますから、20%台となる5%の引き下げでも2.5兆円の減収になります。その財源の確保には、法人税制度の見直しと景気回復に伴う税収、そして、外形標準課税制度などの地方税改革を行うことが検討されています。
ここでは、新聞などでは出てこない諸外国の税率の現状、および国税と地方税の関係を見てみましょう。

(1)主要国の法人税率の状況

まず、世界の主要な国の税率を見てみましょう。今、世界で一番高い国が米国で40%となっています。日本は2番目です。米国は、多大な財政赤字を抱えているためで、財源確保の方法が確立したとは言えない現状では、税率の引き下げには慎重にならざるを得ないようです。しかし、オバマ大統領は28%まで引き下げると発表しています。
フランス、ドイツは30%前後です。特徴的なのは、イギリスとアイルランド。現在、イギリスは21%。来年20%に引き下げ、この5年で10%近くを引き下げています。

アイルランドは12.5%で、欧州でもその低さが際立っており、本社をアイルランドにおくイギリス企業も多いようです。両国は、歴史的・宗教的にさまざまな緊張関係を保ちつつ、現在に至っていますが、法人税制面ではアイルランドに追随することにより、イギリスは税制上国際競争力を取り戻しつつあります。
次に中国を見てみましょう。2007年以前は33%の税率で、企業誘致のための優遇税制を数多く設けていました。制度が複雑でわかりづらくなっていたものを思い切って整理・統合し、2007年からは原則として25%、小規模企業については20%、ハイテク企業・技術先進型サービス企業については、15%の税率とされています。

(2)外形標準課税

わが国の法人税実効税率は、国税の法人税に、地方法人2税の法人住民税と法人事業税を含めて計算されています。
ちなみに、平成26年度の国税と地方税の割合ですが、国税23.79%、地方税10.85%の予定となっており、地方税の割合が意外に大きいことが分かります。

新聞などで取り上げられている外形標準課税とは、会社の稼いだ利益(所得)ではなく会社の形式的な側面に着目して課税することをいい、地方法人2税のうち事業税の一部として採用されています。
事業税は、会社の事業性について課税される税金で、事業として行うためには社会的インフラなどの行政サービスを受けているはずだというのが課税根拠です。外形標準課税の算出方式として、賃金や利息や賃借料の支払い実績に着目した付加価値割と資本金等の額に着目して課税する資本割があります。
現状では、資本金が1億円以下の中小企業は外形標準課税の対象から外されていますが、今回、財源確保候補として浮上したということは、8割以上が赤字であると言われている中小企業に対する適用が想定されます。
しかし、赤字ということは、通常はキャッシュ不足を意味しているので、そこで課税されるということは、税の支払いのために借金を重ねるということになりかねません。

(3)地方税収の偏在性について 

もう一つの隠れた地方税制の問題として、地方税収の偏在性があります。例えば地方法人2税の税収の4割を東京・大阪・名古屋の3大都市が占め、東京は約25%を稼ぎ出しています。つまり、各都道府県・市町村の間では、明らかに自らが徴収できる税収に格差があるわけです。

日本のほとんどの地方都市や市区町村では収入源である企業が少ないので自主財源が乏しいのです。これを改善するために、国から一定の割合で分配される地方交付税や法人地方特別税が用意されています。
今回の法人税等の税率引下げは、地方の自主財源拡充による自立を促すのか、国がいったん集めて地方に分ける国主導の地方自治を目指すのかという重大な課題を考え直す機会にもなると思います。

 

私の部屋    「江戸っ子気質 」

  江戸時代からの諺に「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」というのがあります。今、私の住居は千葉市ですが、生まれも育ちも東京でしたので、若い頃はそれこそ「江戸っ子の心意気」とばかり、貧乏暮らしまで自慢にしていました。
さて、「宵越しの銭を持たない」とは、一つには、一日の稼ぎ高が翌日まで持ち越せるほど多くなかったこと。もう一つは、当時の江戸は火事が多く公共工事や屋敷の再建・改築などで次の日の仕事に事欠くことがなかったので、宵越しの銭がなくても暮していけたということが背景にあったようです。そして、「江戸っ子気質」を鼓舞することとなった理由ですが、江戸の町の都市化が始まり、江戸への流入人口が増大するにつれ、その新住民に対抗して、オレ達先住民はサッパリしていて腹に企むこともなく、その上金払いもよいということをアピールしたかったからではないでしょうか。

 

あとがき

 普段何げなく使うことが多い「おかげさま」ですが、語源をご存じでしょうか。おかげさまとは元々「御陰様」と書き、ご先祖様が一人でも欠けていれば今の自分は存在せず、ご先祖様の陰でその庇護を受け生活しているという感謝の念が込められています。私自身、慌しい生活の中、そのようなところまで気持ちが至らないことが多いですが、もうすぐお盆の季節、御陰様の気持ちを持ってゆったりと心を落ちつけたいと思います。(坂部啓)

(編集者:小高・高田・坂本・佐藤・坂部啓)

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