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(発行日 2014年10月9日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター
はじめに
代表取締役・税理士 坂部 達夫
恙(つつが)なく過ごす。最近ふと浮かんだ言葉です。辞書を引くと「恙」とは事故や災害のことです。これに会わないという意味で、無事・安全・息災という意味になります。
実は先日、長男の結婚式がありました。来賓の方をはじめ、みなさんが集ってお祝いをして下さいました。
もしもですよ。私や子どもの仕事が順調でなかったら、どちらかの家庭に何か問題があったら、身内に大病や不幸があったらなど、ここに至るまでの「何がしかの状況」が欠けたら、結婚式どころではなかったかもしれません。「恙なく過ごせる」。もしかしたら、「無事」とは、かなり偶然の幸運の積み重ね、そんな気がします。
今月のトピックス
相続に切り込む |
税理士 坂部 達夫
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1.人の死と事前手続き
人には「寿命」があります。生まれてから、息を引き取るまでを「寿命」と言うようです。そして誰しもが、
いつお迎えが来るかわからない。事故で亡くなった方も、朝、家を出るときに「今日、事故にあって帰らないから。」と言うことはないわけです。仮に病気になって、「余命あと・・・日と言われても、」その瞬間まで実感が湧かないのではないでしょうか。ですから、何事も準備・心構えが大事だと思うのです。
私自身ももちろんいつどうなるかわかりませんが、置いていくものは、「存在」と「財産」の二つと考えます。
「存在」は、家族や友人との関係、仕事や生活の状況などから浮かび上がるその人の「人となり」です。
一方「財産」は有形で換金価値があるものと、無形で「お金を生む」もののほかに、財産を減少させる負の財産
(借金・債務)もあります。そこで有効なのは「遺言」です。まさしく読んで字のごとく、「遺す言葉」。
遺すとは、辞書を引くと、「後世に功績や財産を残す。」とあります。お勧めしたいのは、有形の「財産」は、生前に「自分の存在」をしっかり載せたうえで、配偶者や子に譲っておくこと(贈与)。そして、財産としてしっかり残すべきは、「相続税がかからない程度の老後生活資金」、相続税の課税最低限は3,000万円から
4,000万円くらいですからその程度にしておくのがよいと思います。あとは、お金を生む無形の財産、例えば信用や人間関係など。そして、「先祖に感謝する心」ですね。そうすれば、その家は代々続いていくと思うのです。
2.財産と一口に言っても
われわれ税理士の立場から考える財産のうち、プラスの財産は資産価値のあるもの(生命保険金や死亡退職金を含む)、マイナスの財産は借金や損害賠償金、未払いの税金などを意味します。さらに、税金の対象とならない財産として、お墓・仏壇、一身専属権、遺族年金や香典などがあります。一般的には財産に分類されないのですが、私が財産として重要視したいのは、「信用」と「功徳」、すなわち自分が関わる人を大事にすることです。
これは評価したくてもできない財産なので、税金の対象にもなりませんし、換金もできませんが、「人」が残せる最大の価値あるものと考えています。現実にお金を生む可能性もありますし、何より「人間関係」を介しますので、本当に「有って有難い」と感じるものです。
3.財産わけのコツ
よく「相続でもめないコツ」がまことしやかにささやかれますが、そんなコツはありません。兄弟姉妹や親子で仲が悪いケースは日常茶飯事ですし、「心」の問題ですから、今日は菩薩のように振る舞えても明日は修羅の関係にならない保証はないのです。 コツがあるとすれば、生前に「大事に使ってよ」と言って贈与すること。そして、生前に家族で心を通わせることが、最大のコツでしょうか。これを実現するのが、坂部会計事務所考案の「遺言メモ」です。
4.無形の財産価値
「財産があれば幸せか。」という問いに対し、ほとんどの人はそんなことはない、と答えると思います。お金では一時の幸福感を得ても、それが継続しないのは分かっているのですね。もちろん、生活をするためには財産は必要不可欠です。ですが、財産は使えばなくなってしまう「お足」です。
年老いた親が残した財産は、もらった子供も年老いていて、活かせるかどうか疑問だという話はよく聞きます(老々相続)。 そのような有形の財産は、子供が本当に財産を必要としている間に贈与で移しておくべきだと考えます。そして、相続すべき財産は、親が元気なうちに人のために尽くしたり(功徳)、商売で社会的に好ましい影響を与えたり(信用)すること。この無形の財産こそ、次の世代、その次の世代へと順送りすべきと考えます。 相続された無形の財産が長いスパンで考えると、どこかの世代で有形の財産を生むかもしれません。有形の財産は、無形の財産から生まれた「結果」にすぎないと考えられませんか。
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あとがき
コスモスの花が秋風に揺れさわやかな季節がやってきました。私にとって秋といえば実りの秋です。
果物に目がない私は、思わずあれもこれもと買物籠の中に、レジで買いすぎてしまったことに後悔を・・・。
旬のおいしいものを食べて、夏の疲れを体を癒したいものです。(高田)
(編集者:小高・高田・坂本・坂部啓)