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(発行日 2015年12月8日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター
はじめに
代表取締役・税理士 坂部 達夫
とある田舎の鮮魚商であった実話です。
暮れはカニや数の子、お節料理など高額食材が売れる、俗にいうかき入れ時です。その暮れの喧騒が収まったお正月はまさしく空気が違う穏やかなひと時です。ところが、突然お客様からクレームの電話、「昨日の大みそかに買ったお節料理の蒲鉾が 糸を引いている(傷んでいること)。どうするんじゃ。」社長は、元旦の穏やかな日差しの中を軽トラックで、その家へ向かう。
玄関を開けると暖房の熱気が顔を打ちます。怒気をはらんだ主人は玄関の上がり框で仁王立ちになり、「これをみろ。」糸を引いた蒲鉾を投げつける。社長は静かに頭を下げ、代金を返すとともに、新しい新鮮なお節料理を差し出す。今と違って、「すぐにお食べ下さい。」とか「すぐに冷蔵庫にお入れ下さい。」と断り書きが入るような時代ではない。暖房の効いた部屋に半日も置けばお節料理は糸を引きます。それでも、丁寧に謝罪し、静かに去る。それ以来、ご主人はその鮮魚商の常連になったといいます。
ここに経営についての2つの示唆があります。1つは間髪を入れないスピーディーな対応。もう1つは言い訳をしない具体的な謝罪の行動(返金と代品の提供)です。商売の原点を感じた私の実家のリアルな話です。
今月のトピックス
有期労働契約の無期転換に関するアドバイス |
特定社会保険労務士 廣野 正通 |
1.はじめに 平成24年の労働契約法改正に伴い、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えると、当該有期契約労働者の申込みにより無期雇用へ転換させる義務が会社に生じます(同法第18条)。改正法の施行(平成25年4月1日)から2年半が経過し、「通算5年」まで残りの期間が半分を切りました。各企業におかれましては、そろそろ具体的な対応の検討を始められることをご提案いたします。 2.労働契約法第18条(平成25年4月1日施行)のポイント @ 平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約の通算期間が5年を超える場合(平成30年4月1日以降)、対象労働者はその契約期間中に無期転換の申込みをすることができます。 ※ 無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とする等、会社はあらかじめ有期契約労働者に無期転換申込権を放棄させることはできません。 A 無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間等)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。 B 有期労働契約とその次の契約の間に6ヶ月以上の空白期間があるときは、契約期間を通算しません(=クーリング)。 3.対策を講じなかった場合 平成30年4月を迎えるにあたり、会社が何の対策も講じていなかったとすると、直前の契約と同一の労働条件が適用され(上記A)、契約期間のみ無期雇用になります。これにより対象労働者は契約満了の心配なく、安定的に仕事ができるようになります。 一方、会社にとっては、それまで契約満了をもって労働契約の解除が可能とされた契約社員が固定化され、業務の繁閑や会社業績に応じた人件費の調整が難しくなることは否めません。これを危惧して、無期転換前に雇止め(=契約期間満了退職)をする会社が増えることが想定されます。 4.具体的な対応について 無期転換の対象となる5年超の更新実績のある契約社員を更に戦力化したいと期待している場合も多いでしょう。無期転換後の労働条件は、次の3パターンが考えられます。 A.無期契約社員(労働条件は有期労働契約時と同じ) B.限定正社員(職務、勤務地等を限定した労働条件を適用) C.正社員(=無限定正社員、既存の正社員と同じ労働条件を適用) 契約社員の戦力化に向けた「B.限定正社員」または「C.正社員」への積極的な登用を制度化することは検討に値すると思われます。例えば、更新を含めた有期労働契約を最長5年までと雇用契約書に定め、優秀者をBまたはCに登用し、そうでない場合は更新しないとする制度が考えられます。 なお、ここで言う「限定正社員」とは、職務や勤務地、勤務時間などに制約がある正社員を指し、この制約により通常は賃金水準を正社員より低く設定し、事業所閉鎖や職務廃止の際の配置転換義務を正社員(=無限定正社員)ほど強く受けない特徴があります。 5.継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例 無期転換ルールの特例として、都道府県労働局長の認定を受ければ、@専門的知識等を有する有期雇用労働者(=高度専門職)、A定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用契約者(=継続雇用の高齢者)については無期転換の対象となりません。 「A継続雇用の高齢者」の取扱いとして、例えば60歳定年制の会社において、定年退職後、同社で1年単位の嘱託契約(有期労働契約)を更新して5年経過した場合、労働契約法18条をそのまま適用すると、65歳時点でもう一度無期雇用に戻さなければなりませんが、特例によって無期転換の対象から除外できます。 ただし、特例は「定年に達した後引き続いて雇用される」ケースを対象としており、60歳超の契約社員を新たに新規採用する場合はこれに該当しません。例えば、高齢者雇用に積極的な会社(ビルメンテナンス業など)が63歳の方を契約社員として採用した場合、契約更新を繰り返して5年を超えたら、特例が適用されず、68歳で無期転換する義務を負います。このような会社では「60歳超で採用した契約社員が無期転換した場合の定年は70歳とする」といった規程を就業規則に定めておくのが良いと思われます。 6.おわりに |
契約社員を雇用する会社が無期転換ルールとどう向き合うかを検討してきました。会社に無期雇用転換義務が生じる(平成30年4月1日以降)には、最短でもまだ2年以上の期間があります。今なら会社が、対象となる有期契約労働者の活用方針を決定し、適正な労働条件を提示する準備ができると思いますので、ぜひご一考ください。 |
私の部屋 「 観 葉 植 物 」
私が担当する関与先の近所に、植物を中心としたインテリアショップがあり、ずっと気になっていたので先日お店に立ち寄ってみました。店内には和洋どちらの空間でも合うシンプルなデザインの苔玉やミニ盆栽、オリジナルの植木鉢や急須などがあり、私はコロンとした丸みが可愛い苔玉と観葉植物のポトスの組み合わせが気に入り、購入しました。 |