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(発行日 2016年8月9日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター
はじめに
代表取締役・税理士 坂部 達夫
「どんな商売が儲かるのでしょうか」と聞かれることがあります。質問を投げた相手の意図や環境などによって、また、私の気分によっても変わりますが、「人が欲しいものを売れば儲かりますよ」というのが私の回答の基本です。人を楽しませる、 楽にさせるなど「楽」をキーワードに考えると、意外と面白いビジネスの芽があるのです。
爪切りの柄を伸ばせたり曲げたりできるようにした「妊婦さんのための爪切り」、駆除されたシカやイノシシの肉を使った「犬のペットフード(健康食)」など、面白い商材は「つらい思いしている相手を楽にさせようと慮ったもの」が多いのです。もう少し突っ込んで言うと、「潜在的に苦しい、または厳しい状態に満ちているから、この商品やサービスを提供するのです」という、教えをつけて売り出せばいい。まさしく、コンサルティングセールスです。一瞬の楽ではなく、苦しみの本質を理解したうえでの、商品やサービスの開発が事業継続のために必要であると考えています。
今月のトピックス
遺産は被相続人の好きに分けられない? |
税理士 坂部 達夫
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1.遺留分とは
被相続人には、自分の財産を自由に処分する権利が認められています。これを自由分といいます。具体的には生前贈与や遺言で自分の意思で分けることができます。これに対し、法定相続人のうち、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分に相当する利益を相続財産から取得できる権利が認められています。この場合の兄弟姉妹以外の相続人とは、配偶者、子、直系尊属をいい、直系尊属だけの場合には法定相続分の3分の1、それ以外の場合には2分の1の遺留分が認められています。もちろんこの遺留分は、相続が発生した場合の期待権であり、裁判所に申し立てて初めて実現する権利です。
2.遺留分の問題点
遺留分は民法に規定されています。これについての条文は16しかなく、戦前の家督相続の維持が色濃く残る構成になっています。遺留分の根拠として、被相続人の財産に依存していたものの生活保障と、被相続人名義の遺産に対する潜在的持分の清算が挙げられています。ところが、現代においては核家族化や高齢化社会の進行等、配偶者以外の相続人の生活保障や潜在的持分の清算という意味合いが薄れており、被相続人の扶養や資産形成への貢献度(いわゆる対価相続)という視点から相続制度を見直すべきだという声が大きくなっています。遺留分制度の主な問題点を列挙してみましょう。
@遺留分の事前放棄
あまり知られていませんが、遺留分の事前放棄制度(被相続人の生前中に遺留分を放棄できる)が認められています。ただ、強制的に放棄させるのは問題があるので、家庭裁判所の審判を経ることになっています。例えば2次相続(父が亡くなったあとの、母の相続)の時に遺留分の主張を抑えるために、遺留分権者に父の財産を余分に渡し、遺留分を放棄してもらうなどの使われ方をします。
A生前贈与などの算入
遺留分の計算となる遺産には、生前に贈与された資産が繰り戻されて計算されます。第三者への贈与については、原則として相続開始前1年間、共同相続人への贈与については、期間に関係なく無条件で算入されることになっています。このことは、過去の事実を立証することが難しく権利関係が不安定になりがちであることを意味します。
B遺留分財産の価格算定
もっとも気になる問題は、取り戻しの対象となる遺留分財産は、原則として相続開始時点の価額が採用されるということです。つまり、過去贈与された財産を処分したり、価値が上がったりしても(土地や株など)、上がった相続開始時点の価値が取り戻しの対象となるのです。頑張ってその財産を増やしても、取り戻される財産を増やすだけということになります。
3.遺留分の減殺請求
遺言などで分けられた財産に対し、自分の遺留分の取り戻しをする場合の実務の流れをご紹介します。
まず、黙っていては遺留分に相当する財産は返ってきません。相続の開始があったことを知った日から1年以内に家庭裁判所に対し、「遺留分の減殺請求」という手続きを申し立てます(それを過ぎたら時効となり取り戻しができません)。そして、取り戻しができる財産は、原則として現物資産です。価格弁償といって、価値相当額をキャッシュでもらうことができるのですが、それを決めるのは請求を受けた側です。
裁判所で遺留分減殺請求を認められたら、その日から4ヶ月以内に、税務署に対し、減殺請求をされた人は、その価値に見合う相続税の還付請求ができ、減殺請求をした人は、取り戻した財産に対応する相続税の納付をする必要があります。ただ、実務的には、税務署に対する手続きは省略し、当事者間でその金額の清算をすることも認められています。
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あとがき
娘がきっかけで、某アイドルグループにはまってからのこの数カ月、ネットはもちろん出演テレビや雑誌などをチェックするのが日課になっています。そして今月、初めてライブを見に行きます。夫や他の家族には「いい年して・・・」と白い眼でみられていますが、そんなの気にしない。思いっきり楽しんでこようと思っています。(坂本)