ABCネットニュースNETNEWS

(発行日 2020年9月15日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

代表取締役・税理士  坂部 達夫


 長い間、公務として各種研修所の副所長・所長などを歴任しました。現在は、東京税理士会のシンクタンクであり研究機関でもある日本税務会計学会にて、法律部門の副学会長を務めています。かつて行っていた研修所活動と現在の研究学会における活動の違いは、研修と研究の捉え方によるものと思い当たっています。最近それを、後進にわかりやすく伝えようとしているのですが、なかなか難しい。こんな表現をしています。「研修と研究は、それぞれ、知らないことを知る、答えを求める活動ですが、その違いは、主体度、自らのものとして考える心の在り方の程度の問題に帰着する。」などと気取った表現をしています。日々の仕事・生活を研究と位置付けると、物事に対する関心度が変わってきます。

 

今月のトピックス

配偶者居住権について 

税理士  坂部 啓太 

 2018年の民法改正に伴い、配偶者居住権が創設されました。配偶者居住権は、相続により残された配偶者の生活基盤を保護するための制度です。2020年4月1日以後に開始する相続から適用があります。一方で、施行から日が浅く他の相続人の権利や相続税の計算にも影響を与えるため、まずは制度を良く理解することが重要です。


1.配偶者居住権とは何か?

① 概要
 配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなったあと、亡くなった人(以下被相続人)が所有していた建物に、残された配偶者が終身又は一定期間、無償で住み続けることを保証する法定の権利のことをいいます。
 配偶者居住権を一言でいうと住む権利です。厳密にいえば、被相続人が残した建物に住む権利とその敷地を利用する権利です。
 本来所有権には住む権利はもちろん他人に貸したり、売却したりする権利が含まれています。配偶者居住権は、“建物に住む権利である居住権(とその敷地利用権)“を所有権から取り出したに過ぎません。
 そのため配偶者居住権の設定により、建物の所有権は住む権利である「配偶者居住権」とそれ以外の権利である「負担付き所有権」に分解されることになります。
 (配偶者居住権には、その敷地を利用する権利も付随してきますので土地の所有権も「敷地の利用権」と「負担付き所有権」に分解されます)

② 制度趣旨
 日本では高齢化が進むにつれ、平均寿命も延び続けています。そのような社会構造から、夫婦の一方が亡くなったあとも残された配偶者は長期にわたり生活を続けていくことが多くなりました。
 残された配偶者が安心して生活を送れるよう、相続を通じて住み慣れた自宅と生活資金を確保することはとても重要です。配偶者居住権は、このような課題を解決することを期待され創設されました。

 
2.配偶者居住権により解決できること

① 配偶者居住権を利用しなかった場合
 例えば相続人が妻と子で、遺産が自宅(2,000万円)と預貯金(2,000万円)の合計4,000万円だったとします。妻は、自宅で生活を続けることを希望しています。その際、遺産を妻と子で2分の1ずつ分けるために、妻は自宅(2,000万)を相続し、子は預貯金(2,000万円)を相続することにしました。どうでしょうか?金額的にはお互い2分の1ずつですが、妻は自宅こそ相続したものの、生活資金を相続することができず今後の生活に不安が残るかもしれません。

② 配偶者居住権を利用した場合
 配偶者居住権を利用することにより、自宅(2,000万円)を配偶者居住権(1,000万円)と負担付き所有権(1,000万円)に分解することができます。
 話し合いの結果、妻は配偶者居住権(1,000万円)と預貯金(1,000万円)を相続し、子は負担付き所有権(1,000万円)と預貯金(1,000万円)を相続することにしました。
 配偶者居住権の利用により、妻は自宅に終身住む権利を取得したうえ生活資金を確保することもできました。
 配偶者居住権は、第三者に譲渡したり所有者に無断で建物を賃貸することはできません。しかし、その分だけ建物の所有権よりも低い価額で評価されます。その結果、配偶者居住権で住む権利を確保したうえで、預貯金などその他の遺産についてより多く相続できる可能性が残るのです。


3.配偶者居住権の取得方法 

 配偶者居住権は、遺言(死因贈与含む)、遺産分割協議、家庭裁判所の審判のいずれかの方法により取得することができます。被相続人との同居や生計を一にすることは求められていませんが、被相続人が所有していた建物に相続開始時点で居住していた被相続人の配偶者のみが対象となります。
 ただし、被相続人と配偶者以外の者が建物を共有していた場合には、配偶者居住権を設定することはできません。また配偶者居住権は登記をすることにより第三者に権利の対抗(主張)をすることができます。


4.配偶者居住権と相続税 

 配偶者居住権は、相続税法上の財産を構成するため相続税の課税対象となります。一方で、被相続人に係る相続税の計算上、配偶者が配偶者居住権とその敷地利用権を取得すれば、配偶者はその敷地利用権について小規模宅地の特例の適用をうけることができます(負担付き所有権についても要件を満たせば、小規模宅地の特例の適用があります)。小規模宅地の特例は、相続税を大幅に減らす効果があるため相続税の計算をするうえで納税者に有利に働きます。
 また、配偶者居住権は通常、配偶者居住権を取得した配偶者の死亡とともに消滅します。その際の相続税の計算では、消滅した配偶者居住権とそれに伴う敷地利用権を相続税の課税対象に入れる必要がありませんので、子は二次相続において配偶者居住権に係る建物部分とその敷地利用権部分の相続税を負担することなく、完全な所有権を有する居住建物とその敷地を取得することができます。


私の部屋    「危険信号」

 
 最近自分の体が非常に重くなっているのを感じます。自宅の部屋が3階なのですが、上るだけで太ももに疲労を感じます。買い物など30分ほど歩くだけで、ふくらはぎから足の裏までかなりの疲労を感じます。少し走っただけで膝が痛みます。
 それもそのはずで、ここ2〜3年で20キロ近く体重が増えました。学生時代に野球をやっていた時とは考えられないほど動きが鈍くなり、さすがにまずいと思い始めました。もともと血圧も高いほうなので、食生活に気を付けながら、運動すること自体は好きなので何か定期的に体を動かすことを始めていけたらと思っています。    

 

あとがき
 先日、新型コロナウイルス感染症を理由に自粛していた引越しをしました。最寄駅まで少し距離があるものの、日頃の運動不足解消に良い機会だと前向きに考えて新居を決めたのですが周囲の予想通り、私にその気持ちを維持する精神力は残されていません。いかに最小限の労力で効率良く行動するか、早急に私なりの新しい生活様式への移行が求められています。(松永)

社長メニュー(ASP版) 毎月更新!お役立ちコーナー

戦略経営者システムQ&A 補助金・助成金情報

経営革新等支援機関

ページ
最上部
TOP
PAGE
Mail