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(発行日 2022年10月14日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

税理士  坂部 達夫


 2021年10月15日に「書道」が無形文化財に登録されました。過去、我が国の教育の歴史の中で「読み・書き・算盤」は長く中心的存在でした。特に「ペン習字」と「書道」は、趣味的なものではなく、職業・生活の中での切実な必要性から習い事として位置づけられていました。勤勉な日本人気質はここにありそうです。
 ワープロやスマホの普及により、字を書く機会は確実に減っており、忘れる漢字も多くなりました。書道やペン習字は、お手本を倣って書く、「臨書」というのが習得方法の王道です。まっすぐ心地よい線を引くためには、多くの集中した練習が必要です。修練を前提としたお手本に倣う。それが、「ほっとする」「楽しい」「一所懸命」などという感覚とともに受け継がれてきたのだと思います。印鑑が廃止され、サインが脚光を浴びるのも間近です。
 無形文化財登録を機に、今一度墨の香りを嗅ぎ、万年筆を握る機会を増やす、こんなところに日本人が自信を取り戻すきっかけがあるのかも知れません。

 

今月のトピックス

引用と盗用の違い ~ 引用のルール ~

木戸弁理士事務所 弁理士 木戸 基文  


1.はじめに

 この春、ある作文の盗用問題が話題になりました。作文の一部に、他人の文章と似た文章があるというのです。
 他人の文章を勝手に使っても、出典を書いておけば、適法に著作物を利用できる「引用」になると思われているところ、引用といえるためには「出所の明示」のほか、いくつかのルールがあります。

2.引用とは

 他人の文章や画像などの著作物を無断で利用することは、原則として、著作権法に違反することとなります。
 しかし、著作物を利用しようとするたびに、著作権者の許諾を受けなければならないとすると、著作物の利用が妨げられ、文化の発展に役立たないため、例外として、「引用」の場合は著作物を無断で利用できます。
 「引用」とは、他人の文章や画像などを自分の文章の中に取り入れて使うことをいいます。論文を書く際、自説の裏付けのために、他人の論文から必要な部分を引いて紹介したり、文芸作品の批評をするとき、批評する小説を部分的に取り入れたりすることが引用に当たります。

3.引用のルール

 引用といえるためには、以下のルールがあります。

 (1)すでに公表されている著作物であること
 (2)引用する必然性があること
 (3)報道、批評、研究などの正当な目的であること
 (4)自分の文章が中心で引用する文章はその一部であること
 (5)引用した部分を「」でくくるなど、引用した部分が明確であること
 (6)出所の明示をすること

4.引用ルールの解説

 ある作文を検証しながら、上記引用のルールを知られている順番に説明します。

●ルール(5)引用した部分を「」でくくるなど、引用した部分が明確であること
 ある作文は、他人の文章を「」でくくったり、段落を変えたりしていないので、引用した部分が明確ではありません。
 また、引用した部分は、他人の文章に対して語尾などに違いがあり、前後の文章と文章の調子に違和感もないので、自分の文章と区別がつきません。
 
 (注意点) 文章をそのまま引用しなくてはならず、文章の「てにをは」を変えたり、文章を要約したりしてはいけません。

●ルール(6)出所の明示をすること
 ある作文は、他人の文章が掲載された本と公開されたホームページを、参考文献にあげていないので、出所の明示がされていません。

 (注意点) 「」の直後に、著作物名と著作者名を表示します。
       巻頭や巻末に参考文献としてまとめて表示したり、何々の著作物から引用した部分があるとの表示では不十分です。

●ルール(1)すでに公表されている著作物であること
 他人の文章は、出版された本と公開されたホームページの中の文章なので、すでに公開されている著作物です。

 (注意点) 社内や取引先の文章や画像の中には、社内や取引先との間では知られていても、公表前のものがあります。
       公表されていない文章や画像は引用できません。


●ルール(4)自分の文章が中心で引用する文章はその一部であること
 他人の文章は、10ページ近くもある作文の中の10行余りなので、「量的」に自分の文章が中心で引用する文章はその一部といえます。
 また、他人の文章がなくても、作文のテーマや印象は変わらないので、「質的」にも自分の文章が中心で引用する文章はその一部といえます。

 (注意点) 「質的」にも、引用する文章が自分の文章の一部でなくてはなりません。
       短歌や詩などの全文を使うときは、引用する必然性や正当な目的がないと引用とはいえません。


●ルール(3)報道、批評、研究などの正当な目的であること
 ある作文は旅行記なので、引用に正当な目的がないように思われます。
 正当な目的の引用でしたら、「事前に調べたガイドブックには、生き物の渡来について「……」(『著作物名』(著作者名、◯ページ)と紹介されていましたが、現地を訪れて◯◯の可能性もあることに気づきました。」のような文章の流れになります。

●ルール(2)引用する必然性があること
 他人の文章は旅行先の紹介文なので、他人の文章を引用しなくても、自分で見たり、聞いたりしたことを、自分の言葉で表現できたはずです。

 (注意点) 文章の流れ上、他人の文章を使う必要がなくてはなりません。

5.終わりに

 著作物は先人の著作物をもとに生み出されていくもので、著作物の引用は広く行われてきました。盗用の疑いをかけられないためにも、引用のルールを知り、正しく引用することが大切です。


私の部屋       「 スポーツの秋 」

 
 先日、久しぶりにプールで泳いできました。中学、高校と水泳部に所属し、社会人になってからも、環境が変わっても自分のペースで泳ぎ続けてきましたが、20年ほど前に出会った仲間たちのおかげで、それ以降は毎週末にプールで練習、夏には海へ遠泳合宿に行くという、厳しくも楽しい水泳生活を過ごしていました。それが、コロナで自粛しているうちに、引きこもり癖がついてしまい、仲間が泳ぎだしてからもなかなか参加できずにいたのです。別件で連絡した仲間からの強い誘いで2年ぶりに1500mほど泳ぎ、爽快感を思い出しました。体力的にはかなりのブランクになりましたが、初心者のつもりでまた泳ぎ始めようと思います。体を動かすにはちょうどいい季節になりましたね。


 

あとがき
 全国旅行支援が始まった。同時にコロナの水際対策の大幅緩和により、外国人入国者数の上限も撤廃された。少し前なら感染者数が増えるのではと不安だったが、今はもう、ただただ、日本中が前向きに明るくなれるよう祈るばかり。(喜志) 


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