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(発行日 2023年5月15日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

税理士  坂部 達夫


 「銀河鉄道の夜」で有名な宮沢賢治の生涯を題材にした映画「銀河鉄道の父」が5月5日より公開されています。役所広司(坂部と同じ年です。)主演で、かなり感動的な映画です。ところで、日本人の大半が知っている「雨にも負けず、風にも負けず」の散文にちょっと気になる部分があることをご存じですか。「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ アラユルコトヲ自分ヲ勘定ニイレズニ」の後のフレーズです。「ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズ」です。何をよく見聞きし、判るのか?そして何故忘れてはいけないのか?
 宮沢賢治が存命であれば、ぜひ聞いてみたいところです。映画をみても、まだピンときませんね。謎です・・・(この全文は、ウェブで検索すれば、すぐ閲覧できます)。

 

今月のトピックス

「贈与課税の見なおし」に注目(1) 

税理士  坂部 達夫  


1.はじめに

 2023年度の税制改正において、個人関係で大注目すべきは、「贈与課税の見直し」です。相続対策の王道は、身内に生前贈与することによる相続財産の相続開始前の(移転)承継です。さて、2ヶ月連続の掲載をしますので、じっくり内容をご理解ください。
 まずは、この改正の背景をご覧いただきましょう。

2.税財政の現状 

 まず、一般会計における税収ですが、2023年度予算では69.4兆円となっています。バブルの絶頂であった1990・1991年度はそれぞれ約60兆円ですから、それより15%上回っていることになります。ちなみに2021年度が67兆円、2022年度には68.4兆円ですから、税収としては順調に持ち直しているように見えます。実は、その大きな原因は消費税の収入増です。1989年に導入された時の消費税収は3.3兆円だったものが、税率のアップや制度改革によって次第に増加し、2023年度予算では23.4兆円となっています。これは、順調に税収を伸ばしてきた所得税(21.3兆円、ちなみに法人税は14.6兆円となっています)に匹敵する額です。ところが、この税収69.4兆円に対して、2023年度予算の歳出総額は114.4兆円であり、45兆円の財政不足。このうち35.6兆円は国債の発行で補う予定となっています。コロナ禍初年度(2020年度)の国債発行額は108.6兆円を超え、2021年度も60兆円近くの発行が続きましたので、財政状況としてはとても厳しい状況が続いています(国債残高は2022年度末には1029兆円の見込み)。この状況を受けて出てきた施策が、高齢者世代から若い世代に対し早めに資産を移転し消費に結びつけてもらうための「贈与課税の見直し」です。

3.税務上の贈与の類型 

 個人間の贈与課税は、現在2つの類型に分けることができます。一つ目の類型は「暦年課税」です。その年の1月1日から12月31日の間に、一人の人(受贈者といいます。年齢制限なし)に贈与がなされた場合、年間に贈与された財産の価額の合計が110万円(基礎控除)を超えると、超えた金額に一定の税率を掛けるやり方です。その申告納付は翌年3月15日までとなります。税率は、財産の価額の合計額が多くなればなるほど上がる仕組みになっています(贈与税の超過累進税率は10~55%)。この場合、贈与税の対象財産は、金銭に換算(評価)できるすべての財産(物だけでなく権利なども)で、贈与する人も身内・他人に関係なく、すべての個人とされています(法人からの贈与には贈与税は課税されず、一時所得として所得税が課税されます)。
 もう一つの類型は「相続時精算課税」です。1年間(暦年)という期間を区切って計算されるのは「暦年課税」と同じですが、基礎控除(贈与者1人につき累計で2500万円)を超える金額に対して一律20%を掛けて税額を計算し、翌年3月15日までに申告納付が求められます。暦年課税よりも基礎控除が大きく、税率が一律となっていますが、相続が発生した時、この贈与財産は相続財産に、贈与時の価額で足し戻して再計算をするという特徴があります。相続時精算課税のもう一つの重要なポイントは、複数の者から贈与を受けた場合の取り扱いにあります。相続時精算課税の場合、贈与者は60歳以上の父母や祖父母であり、受贈者は18歳以上の子や孫です。そして、それぞれ(父母や祖父母)の贈与に対し、別個に基礎控除を使うことができます。つまり、父母や祖父母の4人から無税(基礎控除2500万円×4人)で1億円の贈与を受けられることになるのです。ただし、一度この制度を利用すると、その贈与者からの贈与では、暦年課税を選択できないことになっているので注意が必要です。

4.改正の概要

 次号で改正の詳細と活用方法を解説しますが、ここでは今回の改正の概要をお知らせします。

①相続時精算課税を選んだ場合、受贈者に対して新たに年間110万円までの基礎控除枠が設けられました。ただし、複数の者から贈与を受けた場合には、
 その基礎控除を贈与金額で按分することになります。
②暦年課税の改正です。相続開始前の3年間の贈与は、相続時精算課税と同じ仕組みで相続財産に加算されていましたが、今回の改正で加算の期間が7年
 に延長されました(延長された4年間については、100万円まで加算されません)。

 これらの改正は2024年1月1日以降の贈与に適用される予定です。

★改正の詳細と活用方法については、次号(6月号)に続きます。


私の部屋       「 ピアノ 」

 
 私の姉が子供の頃ピアノを習っていたので家にはピアノがあります。姉がピアノレッスンを早々に辞めた後も処分されずに、誰にも使われることなく大きな物置台として存在し続けていましたが、この春から4歳になる娘が近所でピアノを習うことになり、30数年ぶりに表舞台に復帰しました。久しぶりに調律をしてもらうとピアノの中から昔遊んでいたドンジャラのメダルが出てきて「こんな所で30数年間も見つけてもらうのを待ち続けていたのか・・・」と、時の経過に感慨深いものがありました。 


 

あとがき
 GW中に、東京五輪2020の水泳競技会場だった東京アクアティクスセンターのメインプールで泳いできた。新しくはあるが正直見た目は「普通」、ところが、なんだか泳ぎやすい。温度なのか水質なのか今まで泳いできたプールとは何かが違う、ぜひお試しあれ。(喜志)


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