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(発行日 2023年6月15日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

税理士  坂部 達夫


 私事ですが、文章を書く機会がずいぶん多くなりました。その書くことに対する想いを記(しる)します。開業したての35年前(私33歳)からしばらくは、ある意味自分をアピールするために、とんでもない迷文を世に送り出していたと思います。過去、書いたものは特に検証もせずに、いわゆる書きっぱなし。私は、自分の文章を読むのが恥ずかしくて推敲はほとんどしませんでした。大きく軌道修正したのは、平成7年から9年にかけて、筑波大学大学院修士課程で、品川芳宣教授の論文指導を受けてからです。その時に品川先生から言われたのが「坂部君の文章は主語がないし、構成が稚拙だね。」いまでも顔から火が噴き出る思いです。今では、極力相手をイメージし、文章を短く、文法を意識、推敲は2回以上と決めています。それでも、校正担当者からは、容赦のない批判の声を掛けられ、へこんだり舞い上がったりの繰り返しです。この世界は、本当に奥が深い。
 ところで、多筆の方にアドバイスを一つ。書くものが複数あったら、平行して書くことをお勧めします。一つの文章を15分から30分。原稿用紙5枚程度なら、3日、休みを入れても1週間程度で書けます。アイデアに詰まって筆が止まることを防ぎ、不要なストレスから解放される効果が期待できます(多少ですが)。これもノウハウです。

 

今月のトピックス

「贈与課税の見なおし」に注目(2) 

税理士  坂部 達夫  


★前月号からの続きです。

 前月号では、2023年度税制改正における贈与課税の見直しの背景と、制度及び改正のあらましをご説明しました。今月号ではその内容に関して、「じゃあ具体的にどのように考え、対応すればいいのか?」という問いに応えられるように掘り下げて解説します。

5.相続時精算課税の問題点


 相続時精算課税は、親族間における財産の移転の時期が、相続時あるいは生前を問わず、税制上中立であることを目指した制度です。これは、平均寿命が延びることによって被相続人も相続人も高齢化が進み、消費が期待できる若い世代に、両親や祖父母の財産がなかなか行き渡らないという事情を改善するためにできた制度といわれています。
 つまり贈与の時期を選ばずに、いつ・何回財産が贈与されても、いずれ相続ですべての財産に課税できるわけですから課税漏れはない、早めにどんどん財産を移転してもらって、消費や投資に使ってもらおうというわけです。
 ところが、生前に贈与した財産を国の思惑通りに消費や投資に振り向け、財産を減らしてしまったらどうなりますか? 将来発生する相続の時に足し戻される贈与財産は、贈与時点での価額ですので、使ってしまって無くなった財産を、計算上は相続財産に足して相続税を計算します。また、生前に贈与された財産の価値が下落したり、災害により消滅したりしても、足し戻される金額は、やはり贈与時の時価なのですから、納税資金不足に陥りかねません。この制度の利用が低迷していた背景には、以上のような事情があります。
 さらに厄介なのは、両親や祖父母から贈与を受ける財産について、一度この制度を選択すると、相続まで継続しなければいけないことになっている点です。一人の者からの贈与が、基礎控除額の2500万円までなら課税はされませんが、それを超えると、たとえ少額でも20%の課税と面倒な申告義務が待っているのです。これも、普及を阻害する要因でした。

6.相続時精算課税の改正ポイント

 相続時精算課税制度は、前述したように贈与の金額や時期は問わず、最終的に相続税課税に収れんするように設計された制度です。一方、国の税収が逼迫する中で、消費の拡大と消費税収が期待されるところですが、このための期待が大きかった相続時精算課税制度の利用がなかなか進まないので、今回2つの改正メニューが用意されました。
 1つ目は、年に110万円の基礎控除です。もともと、相続時精算課税制度には2500万円までの基礎控除が用意されていますが、これを超えると少額であっても課税されてしまいます。そこで、この2500万円とは別枠で110万円まで、基礎控除を新たに認めようとするものです。2500万円まで贈与税がかからなかった生前贈与部分は、相続発生時に持ち戻されて相続財産に足されるのですが、今回の改正により用意された年110万円枠は、相続の時に持ち戻す必要がないので、確実に相続財産を減らす効果が期待できます。
 2つ目は、持ち戻す場合の財産の評価額は贈与時の時価で固定されるのが原則であったところ、土地・建物等が災害により被害を受けた場合には、相続時での再計算が認められました。しかし、贈与する財産は、価値が下落すると負担感が増すだけですので、その影響を受けない預金や生命保険の権利など、価値の固定的なものにすべきでしょう。
 なお、相続財産が相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)までなら、相続時までに相続時精算課税により支払った贈与税相当額が全額還付されます。

7.暦年贈与の改正ポイント

 従来暦年課税分は、相続開始前3年以内に限定して持ち戻しをすることになっていました。裏返すと、それ以前の贈与は、相続財産から切り離して財産移転ができることになっていたのです。基礎控除の年110万円までは贈与税はかかりませんから、子供や孫、さらに兄弟姉妹まで含めて、人数が多くなればなるほど、多くの財産を相続財産から切り離すことができます。
 これが今回の改正により2024年以降の贈与から、持ち戻しの期間が3年から7年に延長されます。ただし延長された4年間に受けた贈与については、総額100万円までは相続財産に加算されないことになっています。この規定は、2024年1月から適用されますが、2027年1月以降毎年1年ずつ加算され、7年が対象になるのは2031年1月以降となります。


私の部屋       「 映 画 」

 
 コロナ禍となってから映画を鑑賞することが増えました。その中でも特に、私が好きな映画は、癌で余命宣告を受けた人が、亡くなるまでにやりたいことのリストを作成し、1つずつ成し遂げていく「最高の人生の見つけ方」という映画です。
 その映画を鑑賞するといつも、自分が生涯を終えるまでにやりたいことを考えますが、あまり多く思い浮かびません。学生時代は山のようにあったのに…と少し寂しい気持ちになります。新型コロナウイルスも第5類となりました。コロナ禍で更に出不精となってしまいましたが、これからは自分のやりたいことリストを1つずつ消していこうと思っています。


 

あとがき
 先日、関与先の社長から「ネットニュース読んでるよ」と声をかけられた。たくさんの方に読んで頂いていることは充分承知しているし、エールはありがたく頂戴しながらも、頭の中では「誰も読んでないさ」と思い込んで、この欄では、気取らず素直な気持ちを書いていこうと思っている。(喜志)


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