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(発行日 2023年11月15日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター
はじめに
税理士 坂部 達夫
第81回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した映画「おくりびと」(2008年公開)のロケ地(山形県酒田市)に行ってきました。
「おくりびと」は「納棺師」となった主人公(大悟 木本雅弘)が人の葬送を通して成長する姿を描いた作品です。そしてこの地には海向寺という真言宗のお寺があり、このお寺には2体の「即身仏」がお祀りされていて一般公開もされています(有名です)。
「即身仏」になるためには、最低1,000日以上、木の実を食べて脂肪を削ぎ落し、竹筒を刺して確保した空気口しかない深く掘られた石穴に入って息絶えます。その後、3年3ケ月を経て掘り出され、漆などで処理されて祀られるというものです。文章で書くと簡単ですが、壮絶です。なぜ、即身仏になるのかというと、「この体こそが仏様の世界と通じているんだ。」とわれわれに教えるためと説明書きには書いてあります。「おくりびと」のロケ地近くに「即身仏」が2体もあるのは、まさしく因縁だと感じ入りました。
今月のトピックス
大きく変貌するマンションの評価方法(相続・贈与) |
税理士 坂部 達夫
タワーマンションは上層階に行くほど市場価格が上がるのですが、相続税の評価額は上層階も下層階も変わりません。加えて総戸数が多いため、一部屋当たりの敷地利用権が小さいなど、相続税評価額が市場価格よりかなり低くなる傾向が強く、国税当局から問題視されていました。
新しい個別評価通達は令和6年1月1日より適用されることとされ、以下に示す有識者会議によると、新通達により評価増となるマンションは、タワーマンションのみでなく、全体戸数の65%を超えると推定されています。
1.マンション評価変更の経緯
令和4年4月19日最高裁判決により、居住用マンションの現行通達による相続税評価額と時価(市場価格)との乖離差を利用した相続税の節税問題が大きな話題となりました。
これを受け、令和5年度与党税制改正大綱(令和4年12月16日)で、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、マンションの市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」旨が宣明され、国税庁が令和5年1月に「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」を設置、3回の会議を経て、令和5年7月21日、マンションの評価を見直す個別通達(案)をパブリックコメントで公表しました(意見募集は8月20日まで)。
そして、令和5年9月28日、マンションの相続税評価について、新しい通達「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」が公表されたのです。
2.新しい評価方法の考え方
そもそも相続税や贈与税は、財産の「時価(一般に第三者間で取引される金額をいいます)」に税率をかけて計算します。従来から「相続税評価額」は、「時価」の8掛け程度と言われていましたが、マンションは他の財産や一戸建てと比べて「時価」と「相続税評価額」の乖離が大きいので、財産の組み替え(金融資産⇒マンション)による節税に活用されていました。
改正後の居住用区分所有マンションの評価方法は、以下の通りとなります。考え方はお示ししますが、詳細な計算式等は、国税庁HPを参照してください。
まず、そのマンションの評価水準を求めます。評価水準とは、時価と相続税評価額の差がどの程度かを示すもので、
①築年数 ②総階数指数 ③所在階 ④敷地持分狭小度
という、4つの変数による「評価乖離率」をベースに求めることになっています(評価水準は1を評価乖離率で除して求めます)。
そして、次の評価水準の区分により、従来の評価額に、一定の率を乗じて新しい評価額を算定することになります。
①評価水準が1を超える場合 従来の評価額×評価乖離率
②評価水準が0.6未満の場合 従来の評価額×評価乖離率×0.6
【評価水準0.6未満】 時価より相続税評価額が低すぎる(都心の新しいタワーマンションなど)
→評価額を時価の6割まで引き上げる(このマンションを所有の方が増税の対象です)
【評価水準0.6以上1以下】 時価より相続税評価額が低すぎでも高すぎでもない場合
→変更なし
【評価水準1超】 相続税評価額が高すぎる(田舎の古いマンションなど)
→評価額を時価まで引き下げる
3.増税の適用対象となるマンション
この新通達の対象となるマンションは、全国すべての二世帯住宅を除く、3階以上の居住用の区分所有マンションとなっています。つまり、区分所有形態でないもの、区分所有形態であってもオフィス用などは対象から除かれます。
タワーマンション以外の居住用の区分所有マンションでも、ある程度の階数があり、さらにその上階層を所有されている場合は、相続税評価額が引き上げられる可能性がありますので、一度ご自身のマンションの評価試算をしたほうがよろしいかと思います。
4.相続税対策の効果はあるか
この改正により、区分所有マンションの評価額の上昇は避けられないものの、
①評価水準は理論上の市場価格の6割までしか引き上げられない
②計算変数は平成30年中の全国の中古マンションの取引事例をもとにしており、最近の都市部マンションの価格高騰は反映されていない
③評価額の引き上げは敷地利用権にも及んでいるので、小規模宅地の軽減効果も大きくなる
などから、節税効果はまだまだ有効と考えています。
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私の部屋 「 つぎ木の柿 」
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実家の庭には一本だけ柿の木があります。毎年秋にはゴマの入った実を沢山つけます。年を追うごとに甘味が増している気がするから不思議です。
この柿の木、元々は渋柿でした。渋柿だった木に私の祖父が甘柿の枝をつぎ木して、渋柿から甘柿に変化させたのです。最初は渋かったけど、段々と木の半分は甘柿、半分は渋柿と変化し、最後は全部甘柿になったのだそう。
植物って不思議です。そんな風に変化が出来るなんて。人生の様で面白いですよね。私もその様に素敵に変化できるかしら。今年も実りの季節になりました。沢山柿が実るか今から収穫が楽しみです。
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あとがき
早いものでもう11月、毎年この時期は間もなく始まる年末調整作業が問題なく終えられることばかり考えているのだが、今年は代表者変更と事務所移転も控えているため、やることは山ほど・・。しかし、慌てても仕方ないので目の前のことを1つずつこなしている毎日である。(喜志)