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(発行日 2024年7月12日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

税理士   坂部 達夫


 日中の強い日差しを避けて木陰に入ると、涼しくてホッとします。体感温度は3度~5度低いそうです。これは、強い日差しを避けることによるものだけではなく樹木の葉から水分を発散する「蒸散」の効果が大きいそうです。木陰効果と蒸散効果は3:7で樹木の力がわかろうというものです。先日、アクロス福岡の外構設計者(田瀬理夫さん ランド・スケープ・デザイナー)から直接お話をお伺いすることができました。福岡市・天神駅近くの「アクロス福岡(ネットで検索して写真を見て下さい)」は、国際会議場や福岡シンフォニーホールといった公共施設、ショップや飲食店を収容する官民複合施設として1995年にオープン。地上14階、地下4階の広大な建物の正面の各階にステップガーデンを設け、現在では、120種類、37,000本を超える樹木が建物を覆い、「山」のようにそびえています。ここの植生は福岡周辺の植物を使っています。さながら、地球温暖化防止と生態系の維持を体現しているが如くです(ご本人も、そう仰ってました)。
 特に印象に残った話は、「民間の事業所や飲食店の出入りはほとんどない。顧客やスタッフにとてもここち良い空間を提供しているのでしょう。」というものでした。経営のヒントが見え隠れします。

 

今月のトピックス

若年層への資産の早期移転と贈与税の役割 

税理士  坂部 啓太  


1.贈与税の役割

 贈与税は相続税の補完税として昭和22年に導入された税です。贈与税の役割は、生前贈与による相続税逃れを防止することでした。そのため贈与税は、通常相続税よりも高額になるよう税率が設計されています。
 贈与税が相続税よりも高額となれば生前贈与は躊躇され、若年層への資産の移転についてブレーキをかけることに繋がります。このことは、後述する「個人金融資産の世代間格差是正のため、若年層へ早期に資産移転をしやすい環境作り」という観点からは望ましいとはいえません。

2.日本における個人金融資産の偏り

 現在、日本が抱える課題の一つとして個人金融資産の世代間格差が挙げられます。
 日本の個人金融資産の年代別の保有残高は『足元では、個人金融資産約1,900兆円のうち、60歳代以上が65%(約1,200兆円)の資産を保有』(※1)とされていますから、日本における個人金融資産の大部分は60歳代以上が保有していることになります(日本の総人口のうち60歳代以上が占める割合は約35%(※2))。
 また『被相続人の高齢化が進んだ結果、「老々相続」が増加し、相続による若年世代へ資産移転が進みにくい状況』(※1)であることも相続税の申告データから明らかになっています。
 金融資産が一部の年代に集中し留まり続けるのではなく、若年層へもしっかりと循環するための仕組み作りは、経済の活性化や世代間格差防止の観点から望ましいといえます。

3.相続時精算課税制度

 若年層へ資産移転をしやすい税制の実現のためには、贈与税が相続税の補完税としての機能を果たしつつも資産移転のブレーキにならない仕組みを考える必要がありました。
 これを実現する仕組みとして平成15年に相続時精算課税制度が導入されました(従来の課税方式は暦年課税制度といいます)。
 相続時精算課税制度の適用対象者は、原則として60歳以上の父母又は祖父母から贈与を受ける18歳以上の子又は孫のみで、暦年課税制度との選択制です。
 一度当該制度を選択したらその贈与者からの贈与については生涯相続時精算課税制度を利用することになります。
 相続時精算課税制度では、その贈与者からの贈与については生涯2,500万円までは贈与税がかかりませんので(2,500万円を超えた贈与については一律20%の税率で贈与税が計算されます)、比較的高額な財産についても贈与税を抑えながら財産の移転を行うことができます。
 しかし一方でその贈与者が亡くなった際には、当該制度を利用して贈与した財産については、相続税を計算するうえで必ず持ち戻さなければなりません(すでに支払った贈与税については、相続税の額から控除できます)。
 生前贈与の際には贈与税を2,500万円まで無税(超えても一律20%の税率)とすることで、「贈与税が高額になるため生前贈与がしづらい」という状況を解消し、贈与者の相続の際に贈与財産を持ち戻して相続税の課税対象とすることで、「相続税逃れのための生前贈与を防止する」という役割も持たせています。 
 ただし受贈者にとっては、生前贈与された財産に対して将来相続税をいくら支払うかが不明瞭という問題が残ります。将来の相続時までに贈与を受けた財産を使い切っていても、相続時には贈与された財産に相続税がかかる可能性があります。このことは、贈与を受けた人にとって大きな心理的ストレスになると考えられます。

4.令和6年の改正

 そんな相続時精算課税制度ですが、暦年贈与との選択性ということもあり実際の利用者数は伸び悩んでいました。そこでもっと多くの人に利用してもらおうと令和6年に改正が入りました。
 具体的には、相続時精算課税制度選択者に対して年間110万円までの基礎控除が付与されることとなりました。
 従来では相続時精算課税制度を利用すると、どれだけ少額な贈与財産であっても相続税の課税対象として持ち戻しを行わなければなりませんでした。そのため実務上の煩雑さを考慮して年間110万円までは持ち戻しの対象外となりました。
 一方で、暦年贈与については令和6年1月1日以降の贈与から相続開始前7年以内(従来は3年以内)に贈与した財産まで相続税の持ち戻し計算の対象に含まれることとなりました。

 (※1) 第1回 相続税・贈与税に関する専門家会合(2022年10月5日) [相1-1]資産移転の時期の選択に、より中立的な税制の構築 P4 ~P5
 (※2) 人口推計 2024年(令和6年)6月報 総務省統計局


私のオススメ       「 パワースポット 」

 
 人形町にある関与先の近所に小網神社という小さな神社があります。1466(文正元)年に創建された神社で、東京大空襲の際に境内建物が奇跡的に戦災を免れたり、この神社のお守りを持って出兵した兵士が全員無事に生還したことから、「強運厄除の神さま」と言われています。また、財運や金運にもご利益があると有名で、「東京銭洗い弁天の杜」とも呼ばれています。有名な占い師が都内屈指のパワースポットだと紹介したことから、最近では行列ができるほど人気の神社となりました。今年に入り何度か立ち寄ったのですが、大行列で参拝するのに1時間以上かかりそうだったので諦めました。時間に余裕がある時に再チャレンジしたいと思います。
小網神社オフィシャルサイト | 強運厄除・東京銭洗い弁天 (koamijinja.or.jp)

 

あとがき
 学生時代からずっと泳いでいるくせに、日焼けを拒んで日傘を愛用している私。ここ数年の夏の暑さと闘うには美容とかおしゃれではなく、命を守るためにも日傘はとても優れている。日陰を探さなくても持ち歩けばいい、男性も女性も、ぜひ活用を。(喜志)


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