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(発行日 2025年5月15日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに

税理士  坂部 達夫


 谷崎潤一郎の遺した随筆に「陰翳礼賛(インエイライサン)」があります。この書籍の帯には、「日本の美学の底には『暗がり』と『翳り』がある。」と刷られています。日本人が、なぜ暗がりを好きなのかということを論考した凄みがある文章だと感じます。谷崎は、「どうも近頃のわれわれは電灯に麻痺して照明の過剰からおこる不便ということに対しては案外無感覚になっているらしい。」と綴っています。現代は、化石燃料から太陽光や風力に依った循環型エネルギーに大きく舵を切り、新聞紙上も、蓄電所だ、フイルム型の太陽光パネルだとにぎにぎしい。電飾だのライトアップだの明るさウェルカムの世の中ですが、そういえばお寺の薄暗い広間にたたずむ金屏風やくすんだ仏像(昔は金色!)はかすかな光を反射して荘厳な気配を醸し出していませんか。谷崎は、闇に潜むかすかな光に美を見出したのでは、そして、我々は、生活をするうえで、この感覚をもう少し大事にすべきではないかと思うのです。


 

今月のトピックス

遺産分割協議と遺言によるトラブル防止について

日比谷T&Y法律事務所  弁護士 植松 勉


1.遺産分割協議と遺言

 ある方が亡くなると、「相続」が開始します。これはみなさんご存じでしょう。では、相続の手続は具体的にどのように進めればよいかはおわかりでしょうか。
 相続の手続は、遺言がある場合とない場合とで大きく異なります。遺言がある場合は、遺言の内容にもよりますが、基本的には遺言に従って、相続人間で遺産を分けます。
 遺言がない場合は、「遺産分割協議」が必要になります。
 したがって、相続が開始した後は、早期に遺言があるかないか調査しましょう。一般的な調査方法は以下の3つです。

①亡くなった方の自宅などに遺言がないかを調べる
②公証役場(全国どこの公証役場でも構いません)で、遺言が作成されていないか検索してもらう
③遺言保管所(東京では、5か所の法務局)で、遺言が保管されていないか確認してもらう 

2.遺産分割協議によるトラブル

(1)遺言の作成状況
 日本の相続では、遺言がないケースが目立ちます。あくまで参考の数字ですが、日本公証人連合会が発表した令和5年の「公正証書遺言の作成件数」は11万8981件、法務省の発表した同年の「遺言書保管制度の利用状況」は1万9303件(保管件数)、合計で13万8284件となっています。この数を、単純に同年の死亡者数157万6016人(厚労省の人口動態総覧によります)で割ると、割合は8.8パーセントにとどまっています。

(2)遺産分割協議とは
 遺言がない場合、遺産は全相続人の「共有」となります。しかし、共有状態は不便です。例えば、建物を相続人全員が共有していると、誰がどの部屋を使うかもめたり、修繕も内容や規模によって、全員または過半の賛成がないと行えない、さらに取壊しや建物全体の売却は全員の同意がないとできません。
 そこで、この共有状態を解消するのが「遺産分割」で、そのために相続人間で行われる協議が「遺産分割協議」です。もちろん、不便が生じない遺産は共有のままでもよいのですが、共有の場合は前述したような不便が生じる可能性があるため、建物に限らず共有はなるべく避けた方が良いとされています。遺産分割協議ではこういった所有形態なども含め、様々な観点から相続人全員が合意できる遺産分割方法を協議することになります。

(3)遺産分割協議とトラブル 
 遺産分割協議では、必ずトラブルが起きるわけではありませんが、相続人同士の仲が悪い場合や疎遠である場合、一部の相続人のみが亡くなった方(被相続人)から恩恵を受けていたような場合(例えば、マンション購入資金などを与えられていたケース)などでは、トラブルに発展することもあるかもしれません。相続人間で協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で解決を図ることになります。

3.遺言によるトラブル防止

(1)遺言の意味
 遺言は、被相続人が「自らの財産の行方について最終の意思」を表示したものです。この意思は、最大限尊重されるべきものですから、遺言が適法なものであれば、相続人は、原則として遺言に従って遺産を分けることになります。すなわち、相続人間で遺産分割のための協議を行う必要はなくなるので、協議を原因としたトラブルが起きることはありません。

(2)遺言の形式
 遺言は、遺言を残した方の真意を確保し、後の変造などを防止するために、厳格に形式が定められています。代表的な遺言形式として、①自筆証書遺言と②公正証書遺言があります。
 今日では、遺言の分野でもデジタル化が進んでおり、②については本年(令和7年)中にデジタル化が開始することが決定しています。①についても、現在法務省において、デジタル化に向けた検討(民法改正の検討)が重ねられています。

(3)遺言があってもトラブルが起きるケース
 残念ながら、遺言があっても相続トラブルが生じるケースはあります。代表的な例としては、①遺言の「形式」が要件を満たしていない、②遺言の「内容」に偏りがあり、相続人が必ず確保できる相続分=遺留分を侵害している、③遺言者が遺言作成時に重い認知症で、遺言の内容が遺言者の「真意」を反映していない、などのトラブルが代表的なものです。
 これらのトラブルは、弁護士に相談したり、公正証書遺言の形式を採用することなどによって防ぐことが可能です。時間と費用を惜しまずに、禍根を残さない終活を心がけましょう。


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あとがき
 突然キッチンの蛍光灯が切れた。近所のスーパーには在庫がなく隣駅の大型スーパーまで買いに行くこととなった。最近はLEDへの切り替えが進み、我が家も蛍光灯はキッチンのみである。この照明器具は天井に埋め込まれていて簡単に取り替えられるものではないが、次の交換までには決断するか・・。(喜志)


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